<ロッテ3-1楽天>◇7月31日◇千葉マリン

 まさかの1球に思わず声を張り上げた。楽天田中将大投手(20)は必死に守ってきた1点を8回、1発でもぎ取られた。マウンド上で言葉にならない声を発し、自分を責めた。同点にされた直後に連打を浴び、完封ペースが一変して8回途中で無念の降板。試合後も「ダメですね。終盤で逆転されるのが多すぎる」と吐き捨てるように言った。またもやって来た“魔の8回”。ベンチから野村監督が出るのを確認すると、静かに首を横に振るしかなかった。

 苦難の1カ月半を振り払う投げざまだった。6月11日以来、勝っていない。ロッテ渡辺俊との息詰まる投手戦に、真っ向から勝負した。終盤を迎えた最初のヤマ場は7回。初めて二塁に走者を許したが、2死一、二塁から里崎を空振り三振に仕留め、ピンチを脱した。だが6回まで80球の好ペースだったが、7回だけで30球。積み重なった疲労が痛恨の1球にもつながった。橋上ヘッドコーチも「田中じゃなければ、8回から交代なんだろうけど」ともらした。絶大な能力を誇るからこその続投が、不運の逆転劇を再び演じる結果を招いてしまった。野村監督も「魔の8回はマー君が多いんか?

 嫌な予感はしてたんだけど。今日は責められない。1点で逃げようという緊張があったんだろう」と、敗戦にも力投の労をねぎらった。

 熱投も実らず4敗目を喫し、チームは借金6に逆戻り。首位日本ハムに13ゲーム差をつけられ、8月を待たずに自力優勝も消滅した。野村監督は「自力どころか他力でもないよ、最初から」とかわした。だが田中は「確実に足手まといになっている。チームの力に全然なれてない」と、自らの責任と話し続けた。あと1歩のところで届かない9勝目。試練の夏を越えるには、ひたすら前を向くしかない。【小松正明】

 [2009年8月1日8時37分

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