<巨人2-1ヤクルト>◇8日◇東京ドーム

 巨人の新サヨナラ男がまたまた打った。亀井義行外野手(27)が今季3度目のサヨナラアーチで試合を決めた。1-1の延長10回、ヤクルト押本から中堅バックスクリーンへの16号ソロを放った。巨人でシーズン3度のサヨナラ本塁打は、70年の王貞治に並ぶタイ記録で、月間2度は02年8月の「サヨナラ慎ちゃん」こと阿部以来7年ぶり3人目になる。チームは5月8、9日の中日戦(東京ドーム)以来となる3連戦での1、2戦目を白星で飾り、3連勝となった。

 巨人亀井は一瞬だけ余韻に浸った。手に残る最高の感触。放物線を目に焼き付け、歓喜のベースランニングへ駆けだした。ホームベース付近で待ち構えるナインを前に、また一瞬ストップした。雄たけびを上げて、笑顔の輪に身を委ねた。「自分でもよく分からない。こうやっていいところで打てて…。ちょっと怖いくらいです」。ファン、チームメート以上に、打った亀井が一番目を丸くさせた。

 筋書きがあるようだった。同点で迎えた延長10回。引き寄せられるように「新サヨナラ男」に舞台が巡ってきた。初球を見送った後の2球目。フォークボールをフルスイングした打球は、七色の虹を描くようにバックスクリーンで弾んだ。「手応えはありましたよ」。大歓声をBGMに、心地よくダイヤモンドを1周した。

 「世界の王」に肩を並べた。4月25日中日戦、8月4日広島戦に続き、サヨナラアーチは今季3度目。シーズン3度は70年の王に並ぶ球団タイ記録だ。「本当ですか?

 いやぁ、すごいことだけどまだ実感がわかないです。(記録を)抜けるくらい頑張りたい」と恐縮しながら話した。

 飛躍に向け、カメが求めたのは“変化”だった。「ルーティンとかは結構こだわるよ」と話すように、昨年は1度決めたことへの変化を嫌った。「キャンプでつくり上げたものを簡単に変えるのは」と、オフに固めた打撃フォームに手を加えることはなかった。ステージアップした今季は、7月上旬にグリップを高く構えるフォームに修正。バットがスムーズに出て、差し込まれなくなった。「常に新しいことへの挑戦。変化していかないと進歩はないからね」。ニュー亀井を象徴する言葉だった。

 原監督は「素晴らしいです。ここのところ存在感が増して、チームに欠かせない選手になっている」と賛辞を惜しまなかった。残りは49試合。「これからは技術だけじゃなく、異次元的な力が必要なゲームが続いていく」(原監督)。巨人のカメにはその力が備わっている。【久保賢吾】

 [2009年8月9日9時1分

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