<楽天7-6ロッテ>◇16日◇Kスタ宮城

 ついに0・5ゲーム差だ。楽天が6点差をひっくり返し、ロッテにサヨナラ勝ちした。山崎武司内野手(40)がプロ野球23人目の通算350号3ラン、2打席連続の2ランで同点とすると、延長12回に小坂誠内野手(36)がサヨナラ右前打を放った。これで3連勝となり、一時は5・5ゲームまで引き離された3位西武に0・5ゲーム差まで迫った。

 誇らしく左手に持つバットを夜空に掲げた。9回2死一塁から150キロの速球を高々と打ち上げると、山崎武は同点弾と確信した。「真っすぐに振り遅れないようにしたら本塁打になってくれた。サヨナラじゃなくて同点止まりなところが、おれなんだよ」と笑い飛ばした。8回に通算350となる3ランを放っていた。球団史上最大の6点差をはね返すサヨナラ劇は、主砲がおぜん立てした。

 経験と開き直りの勝利だ。天敵のロッテ唐川の前にチームは7回まで3安打無得点。自らも3打席凡退していた。「2打席目から(球種の狙いを)決めていこうと思って。9回もカウント1-2からフォークを見逃せたから、真っすぐと決めた」と読み切った。力まかせに振り回した若き日々にはない配球論だ。「野村監督が『読みが外れたらごめんなさいで帰ってこい』って言ってくれるからね」。地元で決めると誓いを立てた350号。苦労の末にたどりついた楽天の地だからこそ達成できた。

 今季は1500安打、1000打点、350号を個人の目標に掲げた。「今日で全部クリアしちゃったからね。あとは41歳で33本の門田さんの記録。大いに色気を出したい」と意欲を見せた。体力は年々衰える。それでも読みと技術で数字と戦い続ける。「いつも30本が壁だから。今日で打てなくなるんじゃないか、死球で骨折するんじゃないかって思ってやってるよ」と、また笑った。

 ベテラン主砲の2発がサヨナラ勝ちを呼び、クライマックスシリーズを争う3位西武に0・5ゲーム差まで近づいた。野村監督は「走者をためてゴーン。でかいわな。あと10年はできる。よう勝ったよ。0・5差?

 まだ開くよ。縮んでは開き、縮んでは開き」と喜びの中で気を引き締めた。チームの大黒柱も「これからプレッシャーの中で1カ月半、しびれるような試合をしたいね」と言葉に力を込めた。苦しい戦いを一番楽しみにしているのは、チーム最年長の兄貴だ。【小松正明】

 [2009年8月17日9時5分

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