<楽天6-2ソフトバンク>◇9月30日◇Kスタ宮城

 ついにマジック3だ。3位楽天がソフトバンクとの2位攻防4連戦第2ラウンドに逆転勝ちし、再び0・5ゲーム差に迫った。1点を追う5回、相手のミスに4安打を絡めて一挙6点を奪ってひっくり返した。得意のビッグイニングで72勝目を挙げ、球団創設5年目で初めて勝ち越しを決めた。4位西武が負けたためクライマックスシリーズ(CS)進出マジックを2つ減らして3とし、最短で2日にも初のCS進出が決まる。

 パンパカパーン!

 突如として、楽天恒例の「エルニーニョ祭り」が始まった。1点を追う5回、先頭草野のラッキーな一塁強襲安打に始まり、ソフトバンク田上の悪送球で同点。気がつけば6得点を挙げていた。窮地になるほど、相手のミスを誘って大量点につなげる今年の楽天の“得意技”をこの日も発揮した。野村克也監督(74)も試合後にお立ち台に上るしぐさを見せる上機嫌ぶりで「エルニーニョだな」とニヤリ。前夜にサヨナラ機を逃して負けても、アゲアゲの楽天は止まらなかった。

 すきを見つければ、あっという間に調子に乗る。同点に追いついた直後の1死満塁から、中村真の大きな飛球をオーティズが追い損ねるラッキーな勝ち越し打。続く渡辺直は左翼線に2点適時二塁打を放ち「いろいろなミスで雰囲気も悪かったんで『ここだ!』と思いました。よかった~。マジでデカイ!」としてやったり。山崎武は大荒れの甲藤に「デンジャラスピッチャー!」とおののきながらも右犠飛を放った。野村監督も「今年は1イニングで大量点が多いね。団体競技の基本、つながりが出てきた。打順だったのが打線になってきた」と、集中攻撃を身につけた打者陣を満足そうに振り返った。

 最近の野村監督は「今年は不思議なことが起こる。エルニーニョだ」が口ぐせだ。実際にオリックス一輝、ロッテ西岡、ソフトバンク本多など、好守の内野手が失策を重ねる“被害”にあっている。数年に1度、冷夏や暖冬を起こす自然現象を例に出すが、これだけ相手を自滅させるチームの方がよっぽど珍しい。

 荒れた試合をつくったのも、ほかならぬ楽天だ。1回1死二塁から鉄平の右飛に二塁走者の中村真が大きく飛び出し、まさかの併殺。「またやっちゃいました」と反省した。2回にもリンデンの右前打で、一塁走者の草野が三塁を狙うも憤死。3回は中谷の犠牲バントが、投ゴロ併殺となってしまった。直後の4回に先発永井が松田に初安打となる先制ソロを浴びる最悪の展開。序盤まではとても勝ち試合の内容ではなかった。野村監督も「ミスが3イニング続いた。本当に嫌な展開で、よく逆転勝ちしてくれました。昨日の負けも本当に嫌な負け。まあ、昨日のことはもういいや」と胸をなで下ろした。

 幸運な1勝で2位ソフトバンクとは再び0・5ゲーム差。4位西武が敗れ、CS進出へのマジックは3にまで減った。地元CS開催への希望をつなぐ勝利で、球団初のシーズン勝ち越しも決定。野村監督は「なんとか仙台でできるように。お世話になって、声援を頂いたファンに恩返ししたいしな」とほほ笑んだ。永井と渡辺直も「KスタでCSをやりたいです」とお立ち台で叫び合った。当初の悲願達成にはあと3歩だが、チームにはその先しか見えていない。【小松正明】

 [2009年10月1日8時55分

 紙面から]ソーシャルブックマーク