<日本シリーズ:日本ハム0-2巨人>◇第6戦◇7日◇札幌ドーム

 巨人内海哲也投手(27)が、チームの危機を救う会心の投球をみせた。1回2死、先発東野峻(23)が高橋の打球を右手に受けて負傷降板。スクランブル登板した内海は、6回途中まで無失点と好投し、勝利投手となった。クライマックスシリーズでは登板機会なし。今シリーズ第2戦では3回もたずにKOされた左腕が、日本一を決める一戦で見事に雪辱した。

 後輩の無念を胸に秘め、内海はマウンドに上がった。1回2死一、二塁、先発東野が右手甲に打球を受けて降板。緊急登板を告げられた。「10球くらい投げていきました。何とかチームの勝利に貢献したかった」。勝利への執着心が体と心を突き動かした。

 先発した第2戦で3回途中4失点で降板。第6戦の先発権を失った。「短期決戦は怖い。一度ダメならチャンスはないんだから。でも、あきらめない。出番があると信じて準備します」と心に決めた。試合前、監督室に呼ばれた。原監督から「本心であれば、お前を先発させたい。でも、今日の先発は東野だ。自分が投げているつもりで見てくれ」と告げられた。ブルペン待機でも、闘争心は失っていなかった。

 あの日の屈辱が、内海をまた一歩成長させた。中日とのCSは第5戦に先発予定だったが、4戦目で決着。3年連続2ケタ勝利を挙げた男にとって、直視できない現実だった。くじけそうになる心をつなぎ留めてくれたのは、日本シリーズ進出が決定した直後の原監督の言葉だった。

 原監督

 今回は投げるチャンスがなかったけど、日本シリーズではお前の力が必要なんだ。頼むぞ。

 絶望の中、スッと光りが差し込んだ。「監督の言葉がほんまにうれしかった。監督を男にしたい、心からそう思った」。日本一奪回こそが、自分に課せられた使命だと感じた。

 この日を予感させる運命的な夜だった。前日の深夜0時ごろ。内海の携帯が鳴った。声の主は東野だった。「内海さん、金縛りにあいました。嫌な予感がするんです」と訴えてきた。先発を翌日に控える後輩に「大丈夫やから気にすんな。明日に備えろ」と返した。電話を切った内海だが、妙な胸騒ぎに襲われた。「あいつ、大丈夫なんかなぁ」。就寝したのは午前3時過ぎ。翌朝「電話で、眠れんかったわ」とおどけたが、気遣いの表れだった。試合後、内海は言った。「自分の投球?

 東野が大丈夫なのか、心配でした」。弟分を思う、兄貴の優しさが緊急登板の原動力だった。【久保賢吾】

 [2009年11月8日9時31分

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