亡き名サブマリンの秘蔵っ子が、低迷打破のキーマンに指名された。最下位に沈む日本ハムが19歳左腕、土屋健二投手を27日のオリックス3連戦(札幌ドーム)で初めて1軍昇格させる。1月に急逝した小林繁氏(享年57)が2軍投手コーチだった昨季、手塩にかけ育ててきた逸材。完成度の高い投球術と強心臓が売りの男が、起爆剤として投入される。

 志半ばで去った師が立てなかった札幌ドームで、土屋が晴れの日を迎える。26日、2軍施設の千葉・鎌ケ谷から札幌入り。その際、ビッグマウスをさく裂させた。「中継ぎとか先発とか別に自分には関係ないんで。ガンガンいくだけですから」。キャンプでは2軍スタートも1軍に昇格。オープン戦終盤で生き残られなかったが、ようやくチャンスが到来した。

 開幕からイースタン・リーグで3試合、11回を投げ防御率0・82。抜群の安定感で、過密日程のゴールデンウイークを戦い抜く戦力に選ばれた。3月3日の札幌ドームでの阪神とのオープン戦で小林氏の追悼セレモニーが行われた際には、感謝の気持ちを伝えるために遺族の姿を探し回った。今季から1軍投手コーチに配置転換され、ともに戦うはずだった恩師の思いも背負い、大舞台へ向かう。

 反骨の象徴だった小林氏のような“成り上がり”を目標に設定する。「中継ぎで結果を出していけば(その後に)先発もあるって思う。先発をやりたいので、そうなれれば」と強く誓った。生前、小林氏はこう評価し、あえて厳しく接してきた。「あいつはまだまだだけれど、いいものを持っている。これからだよ」。天国から見守り続ける師への手向けの投球が、日本ハムの反攻への力になる。【高山通史】

 [2010年4月27日9時54分

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