<中日1-9阪神>◇5日◇ナゴヤドーム

 チェンよ、はい上がれ-。中日落合博満監督(56)が3連敗となったチェン投手(24)に「ムチ」を振るった。今季7試合目の先発となった阪神戦は4回6失点であえなくKO降板。6戦連続で勝利から遠ざかっている左腕について指揮官は「逃がさないよ。ボロボロになればいいじゃないか」と独特の言い回しで復活を期待。あえて試練を乗り越えるまで先発で起用し続けると明言した。

 これまで圧倒的な力で打者を牛耳ってきた男がマウンドでもがいていた。4回8安打6失点でのKO。致命傷となったのは走者を置いて浴びた2被弾だった。2回1死二塁、マートンに2ラン。カウント2-3から内角ストレートで決めにいったが、ファウルされた。絶対の自信を持つ速球で空振りが奪えない…。最後はスライダーを左翼席に運ばれた。4回には新井に初球のスライダーを仕留められた。左翼への3ラン。6-1となって勝負は決まった。今季初登板で完封した3月27日広島戦以降、6戦連続勝ちなしとまさに泥沼だ。

 「真っすぐで空振りがとれない。ボールが弱い。フォームも変えていないし、原因はさっぱりわからない。相手とのタイミングがあっている感じもするし、クセが出ているのかも」。わかっていても打てないと称される速球に威力がない。苦しい中で投げたスライダーをドンピシャリで2本塁打された。クセがばれているのか…。原因がわからないから疑心暗鬼にもなる。試合後、24歳の左腕は悩みのまっただ中にいた。

 落合監督はそんなチェンをあえて突き放した。3連勝を逃した独り相撲について「試合になりませんでしたな。4敗も、5敗もする投手のする投げ方じゃないか」と切り捨てたものの、リリーフに配置転換する可能性を問われ、きっぱりと否定した。

 「逃がさないよ。いいじゃん。ボロボロになれば。悪ければ(2軍に)落ちるだけや。これからの野球人生を考えても、楽させて何になるよ。だれが助け舟なんか出すかよ。すべて自分の責任!

 だれの責任でもない。過去に大エースと言われた人でも、そういうのを乗り越えてきたんだ」。

 昨季、最優秀防御率のタイトルを獲得したチェンは吉見とともに先発陣の大黒柱として期待される。指揮官はこの不振を、超一流へと成長するための壁であると強調した。どん底まで落ちて、はい上がれ-。落合監督流の辛口コメントにはそんなメッセージが込められていた。

 「壁を越えないといけないですね」。帰り際、チェンは前を見つめて言った。頼れるのは己の力のみ。もがき続け、苦しみ抜いた先にあるものを見つけてみせる。【鈴木忠平】

 [2010年5月6日10時14分

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