<西武1-0ヤクルト>◇18日◇大宮

 背中から強烈な追い風を受けた岸孝之投手(25)が踏ん張った。「カーブが入らなくて、最初は本当に困りました。その分、真っすぐは良かった。風が強くて飛ばされそうだったけど、なんとか頑張りました」。細い体を笑いのネタにできたのも、ハーラートップタイ7勝目を手にした達成感からだった。

 8回を3安打無失点。風に苦労した2四死球を差し引いても、二塁を1度しか踏ませない内容は圧巻だった。1点リードの8回1死一塁では、昨季セ盗塁王・福地の二盗を阻止してピンチの芽を摘んだ。土壇場で、課題にしてきたセット時の成長を示した。プロ2度目の「1-0完封」を逃し「いくつもりでしたけど、監督には疲れてたのがバレてましたね」と肩をすくめた。1点もやれない状況で神経をすり減らしただけに、最終回は守護神シコースキーに任せ、勝利の瞬間をベンチで見届けた。

 「大宮といえば、ブランコに打たれたことしか覚えてない」。09年5月19日の中日戦で、助っ人砲にバックスクリーン直撃を含む2発を浴びた。1発注意の打者に、いずれも不用意な初球を運ばれた反省を生かした。ヤクルト大砲コンビのデントナ、ガイエルに甘い初球は1つもなかった。最少スコアでもっとも怖い1発に注意を払い、無安打に料理した。球速表示が設置されるなどリニューアルされた球場で、1年後の自分も変わった姿を印象づけた。

 被弾の少なさが、好調を支えている。昨季は26本で被本塁打王だったものの、今季はまだ2本。7回で1発を許していた計算が10年は32回で1発と、飛躍的に向上し「(基本となる)真っすぐが良くなっているからだと思います」と胸を張った。

 得意とするナイター試合の連勝も14に伸びた。「夜の帝王って言われて本人は嫌がってたけど、これならデーゲームでも大丈夫」と渡辺監督。今年の安定感は、少々の風ぐらいではびくともしない。【柴田猛夫】

 [2010年5月19日9時12分

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