<ソフトバンク2-4阪神>◇18日◇福岡ヤフードーム

 やはり「代打の神様」だ。追い込まれた阪神が土壇場で追いついた。1点を追う9回、桧山進次郎外野手(40)が守護神馬原から起死回生の同点左前適時打を放った。桧山は代打で通算108安打目。遠井吾郎に並ぶ球団最多記録を、粘勝を呼ぶ一打で飾った。

 虎を地獄から天国へとすくい上げたのは、神様のひと振りだった。1点ビハインドの9回2死二塁。あと1アウトで敗北が決まる土壇場。代打桧山が守護神馬原の初球140キロカットボールをとらえた。打球は左前ではずみ、代走大和が快足を飛ばしてホームイン。何たる勝負強さ。起死回生の同点だ。一塁ベース上でにっこり微笑む神様を、この日1番の大歓声が包んだ。

 「ほとんど対戦してない投手なんで、いい球が来たら積極的に行こうと思ってた。(やや詰まった)あの当たりやから(二塁走者も)かえってこれたね」

 延長戦への道を切り開いた一撃は、球団史に名前を記す記念のヒットでもあった。これで代打通算安打は108本。阪神一筋20年、4番のほか、かつては代打の神様役を務めた遠井吾郎の代打安打記録に並んだ。奇しくも同じ左打ちで背番号は24。「偉大な先輩が積み重ねてきた偉大な記録ですからね。同じ背番号24として、これからも汚さないようにしていきたい」。自分に言い聞かせるように誓った。

 猛虎の先輩、OBに支えられて今の自分があることを感じている。先日亡くなった田宮謙次郎OB会長の葬儀(10日茨城・筑西市)には練習で参列できなかったが、心からの献花をささげた。「田宮さんはチームが弱い時からOB会長をされていて、会うたびにぼくを励ましてくださったんです。今は感謝しかないです」。91年のプロ入りから、その後4番も任されて苦しんだ当時のご意見番だった。歯に衣を着せない一言一言が肥やしになり、神様の称号を得るまでに成長できた。田宮氏も遠井氏も今、天国にいる。先人たちへの感謝は結果を届け、強い阪神を作ることだった。

 真弓監督も興奮を隠せなかった。「桧山?

 おう、そうそう!

 久保があれだけのピッチングをしてくれた。何としてもこのゲームを取りたい、取らなアカンゲームだった。最後は城島に代走(大和)を送ってでも点を取りたかったんでね」。桧山はここ11試合で5安打の暴れっぷり。守護神馬原との神様対決を制し、「ホトケの吾郎ちゃん」の域に達した。次はいよいよ、阪神史上最強の神様になる。【松井清員】

 [2010年5月19日10時31分

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