<西武3-2横浜>◇2日◇西武ドーム

 西武涌井秀章投手(23)がチームの連敗を3で止めた。8回で10安打を浴びながら2失点と粘りの投球で、今季7勝目、交流戦通算最多タイの16勝目を挙げた。右ひじ痛の4番中村を欠き、打線の調子が上がらない中、10三振を奪うなど要所を締めて終盤の逆転劇へと導いた。

 チームの苦境を救うエースの仕事だった。「連敗中だったので止めなきゃと思って球場に来た」と気合十分の西武涌井。1回は空回りして2失点すると、しばらく援護がない。劣勢の展開で、逆転勝利への流れを引き寄せたビッグプレーがあった。1点差とした直後の7回無死一塁の場面だ。

 「点を取った後、簡単に先頭を出してしまった。得意なので狙ってました」。犠打を狙う9番武山にバントさせ、最短距離でダッシュ。二塁に矢のような送球を送り、打者走者も余裕をもってアウトにする併殺を完成させた。昨季ゴールデングラブ賞の美しいフィールディングで、終盤の同点、勝ち越し劇を呼んだ。

 やや一塁よりに転がったバント。二塁で刺すには素早い反転と正確な送球が求められるが、上体はまったくブレず、無駄がない。122球目。並みの投手なら疲れて足にきてもおかしくないが、日ごろから走り込んでいるたまものだった。中学時代、父孝さんと朝練習し、毎日1時間ノックを受け続けて上達した。「(父が)ゴルフに出掛け練習しなくていい時がうれしかった」というほど土にまみれた青春時代の勲章。誰にも負けない自信がある。

 8回10安打されながら、145球を粘り抜くと「中5日の方が得意なんで、これからも監督に直訴したい」とサラリと言ってのけた。無尽蔵のスタミナと、一流の技術がもたらしたチームトップに並ぶ今季7勝目、交流戦通算最多タイの16勝目だった。【柴田猛夫】

 [2010年6月3日9時33分

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