<ソフトバンク2-1楽天>◇26日◇Kスタ宮城

 背番号21の復活だ。ソフトバンク和田毅投手(29)が3年ぶりとなるシーズン10勝目を挙げた。内容には不満を残しながらも6回を5安打1失点に抑え、通算6度目の大台到達。14戦目登板での10勝は自己最速だ。チームは6連敗の後に3連勝で盛り返し。首位西武との差を3・5ゲームに縮めた。

 もっと投げたかった。和田は口をとがらせ、出しかけた右手を引っ込めた。6回裏を投げ終えて戻ったベンチ。高山投手コーチから「降板」を意味する握手を求められても、すぐには応じられなかった。いったん席を外してから再び説得され、ようやくマウンドを譲った。

 「悔しさはもちろんあった。もっと長い回を任されるように自分がしっかりしないと」

 自己最速で10勝に到達しても、端正な顔立ちからは、わずかに白い歯が見えただけだった。

 本人は不満でも、マウンド上の背番号21は頼もしかった。3回に不運な適時二塁打で1点を失ったが、続く聖沢の犠打が小フライになると猛然とダッシュしてグラブを差し出し、前傾姿勢でキャッチ。二塁走者を刺して追加点を防ぎ、4回以降は二塁を踏ませなかった。

 「スライダーと直球は今ひとつだったけど、チェンジアップが良かった」

 自分の状態を冷静に分析して、最少失点にとどめた。2ケタ勝利は3年ぶり。「ようやく出発点に立てた。先発をやらせてもらっている以上、2ケタは最低限。逆に(過去2年間)勝てなかったことが、自分にとっては情けない」と通過点を駆け抜けた。

 4勝止まりの昨季は左ひじの故障に悩まされ、原因不明の頭痛で眠れない日もあった。投手陣の柱としての自覚から、ふがいなさに胸を痛めた2年間だった。復活に向け、新たな試みに次々とトライした。今季からカバンに1冊のノートを入れて持ち歩いている。試合や練習で気付いたことがあるたびに、ペンを走らせる。

 「今までは頭の中に入れていたけど、残しておいた方が振り返られる」

 さらに練習では、ソフトボールや楕円(だえん)型の球を投げるメニューを取り入れた。「うまく投げないと変な回転がかかったり(腕に)負担がかかるので」とフォームの確認に利用する。過去の実績を忘れ、貪欲(どんよく)な姿勢で野球に取り組んできた。

 ただ勝つだけでは満足できない。ヒーローインタビューでは「いつも言ってますけど、次は最後まで投げられるよう頑張りたい」と声を張り上げた。今季はまだ完封がなく、完投が1度だけ。だから、さらに上を目指す。「ここからどれだけ勝ち星を挙げられるか。自分の成績を抜かないと」。自己最多は03、06年に挙げた14勝。今年の和田ならもっとやれる。

 [2010年6月27日11時20分

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