<楽天1-13ソフトバンク>◇21日◇Kスタ宮城

 1602日ぶりの鬼門突破だ!

 ソフトバンク杉内俊哉投手(29)が、ハーラー単独トップの15勝目を挙げた。楽天打線に対し8回5安打1失点。06年4月2日に勝利して以来5連敗中(09年クライマックスシリーズ含む)だったKスタ宮城で9奪三振の力投。自己最速150キロもマークした。前日20日に自力Vを復活させたチームは首位西武に1・5ゲーム差と迫り、再び追撃態勢に入った。

 この日ばかりは、杜(もり)の都の夜風が心地よかった。8回裏。楽天の上位打線を3者凡退に抑えた杉内が、一塁側ベンチへ軽い足取りで戻った。腰を下ろすと高山投手コーチが隣へ。「お疲れさま」と、左太もも付近をポンポンとたたかれた。ペットボトルの水を勢いよく飲むと、ホッとした笑顔を見せた。

 杉内

 4年間勝っていなかったので、この球場で勝てないんじゃないかと思った。開き直った。

 実に1602日ぶりのKスタ宮城での白星だった。06年4月2日の勝利を最後にCSを含め8戦で先発して5連敗。4年以上勝てなかった鬼門を、終盤の大事な一戦で攻略した。

 苦手なんて言ってられなかった。前回登板した7月13日には自身3年ぶりの押し出し四球を出すなど、6回8安打4失点。この日も初回に先頭の渡辺に、初球を中前打された。それでも、エースとして、勝たなければいけなかった。落ち着いて2死を奪うと、4番山崎を147キロの直球で見逃し三振。「(デーゲームで)西武が負けたというのを聞いていたので、今日勝たないと意味がないと思った」。エースとしての責任感が、苦手意識を上回った。

 高ぶる気持ちを抑えることで、自分に勝った。これまでのKスタでの杉内について高山コーチは「異常に力む」と説明。過去に「低い」と話したがあるマウンドへの苦手意識に、勝てない焦りが加わり、悪循環となっていた。この日は、心は熱くとも頭だけは冷静に保ち、力まず球を低めに集めた。それでも6回には中村紀、山崎に対し自己最速となる150キロを計測。「自分を抑えながら投げてくれたけど、それでもまだ力んでいたね」と高山コーチ。熱いエースを、ほほ笑ましくたたえた。

 81日ぶりに、ハーラーダービーを争う同い年の和田より白星を1つ先行させた。「同級生には負けたくない気持ちがあるんで」。ライバル意識はもちろんあるが、それよりも「2人が勝ち続けるとチームもいい方向にいく」強い気持ちがある。自力Vを1日で復活させた勢いそのままに、首位西武に1・5ゲーム差に迫った。エースの鬼門突破は、チームにこれ以上ない勢いを与えた。

 [2010年8月22日11時5分

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