<ソフトバンク2-1ロッテ>◇29日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクが「秋山マジック」の再現で天王山に勝ち越し、再び単独首位に立った。6回無死二塁で秋山幸二監督(48)が2番手に指名したのは、27日に同様のピンチを抑えてプロ初勝利を挙げた森福允彦投手(24)。27日もロッテ主力を封じた変則サウスポーがこの日も期待に応えてピンチを脱出。またも伏兵で勝利をたぐりよせたソフトバンクが、Vへラストスパートだ。

 「マジシャン秋山」が、またロッテ打線を翻弄(ほんろう)した。6回無死二塁。秋山監督が動いた。先発大隣をあきらめ、2番手にコールしたのは森福。得点圏に走者を置き、対井口、金泰均と続くところで変則サウスポー投入。誰もが思ったはずだ。森福がプロ初勝利を挙げ、単独首位に立った2日前と同じ、と。

 ◆27日ロッテ戦

 2点リード5回1死満塁で対井口に森福投入。井口を空振り三振に仕留め、4番金泰均を二ゴロに打ち取った。翌6回も無失点で乗り切り、勝利投手になった。

 ◆29日

 1点リード6回無死二塁で対井口に森福投入。井口に右前安打され、無死一、三塁とピンチは広がった。だが、そこから金泰均を高め直球で空振り三振、5番福浦は外角スライダーで空振り三振。最後は今江を外角シュートで二ゴロに抑えた。

 一昨日がプロ初勝利なら、この日は今季初ホールド。クルリと打者に背中を向ける幻惑投法が、またもさえ渡った。首位決戦で2試合もロッテ打線の前に立ちはだかった体重65キロの細身左腕。大仕事に秋山監督は「大隣が試合をつくってくれたし、森福が今日の試合もしびれるところで、本当に応えてくれた」と賛辞を惜しまなかった。

 秋山マジックは大胆な森福起用だけではなかった。先発大隣の女房役に指名したのは前日まで2試合欠場した山崎。大隣&山崎のバッテリーは4月11日から6月6日にかけ、先発で7度コンビを組んだが、その間1勝もできなかった。

 その後大隣は、山崎離脱期間の7月16日に勝利。捕手を山崎に託したことに、秋山監督は「しばらく結果出ていないからな」と語った。リベンジの舞台を与え、大隣の復活勝利を引き出してみせた。

 もちろん、マジックの締めは今季30度目のSBMそろい踏み。最小点差を守りきり、指揮官に「1点差で勝つのは大変なこと。みんな気持ちが入ってるんじゃないかな」と笑みが広がるのも当然だ。

 ペナント佳境を迎え、秋山監督のふるうタクトに選手が応え始めた。大隣は7月29日にベンチで秋山監督からアドバイスを受けた身。森福は5月下旬に1軍登録された際、1試合も登板機会なく6月上旬に2軍落ち。それでも、腐ることなくチャンスを待ち続けた。今では試合後に誰よりも長く風呂につかるなど体調管理を万全にする。しびれるような出番の連続に「ああいう場面に投げさせてもらって幸せ」と語った。

 秋山マジックの最終演出は…。きっと歓喜の優勝に違いない。

 [2010年8月30日11時42分

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