阪神星野仙一オーナー付シニアディレクター(SD=63)を新監督招聘(しょうへい)に動く楽天が、28日に行われるドラフト会議の1位指名候補として、早大・大石達也投手(4年)を最上位にリストアップしていることが、6日までに分かった。アマ球界屈指の右腕に球団は極めて高い評価をしている。チームメートの福井優也、中大・沢村拓一、佛教大・大野雄大の各投手も大石同様に高評価しており、他球団の動静を注視しながら、当日ぎりぎりに1位指名を確定させる。

 楽天ドラフト1位筆頭候補は大石だ。独自のドラフト戦略を行う球団方針。他チーム編成部門と常に一線を画し、眼力を信じ候補を絞る。動向を読みにくいが大石マークは一貫して外していない。楠木編成部長も神宮球場に足しげく通い、投球をチェックしている。

 理由は「強い直球」にある。球速、球質ともにアマ随一のストレートを投じる大石。投球術を駆使する同じ早大の斎藤佑樹はタイプが異なる。この能力は現在のパ・リーグで一線を張るに不可欠な資質といえる。ダルビッシュ、涌井、岸、杉内、岩隈、田中、金子千。エース格はおしなべて直球が強く、カウント球にも勝負球にもできる。近年のパ投手隆盛が、打者の直球対応能力も高める相乗効果を生み、パ主力打者は直球をそう苦にしない。

 大石が本格派の系譜を継ぐ素材であることは、数字が雄弁に語る。通算142イニングで奪三振208。世界大学野球選手権では4試合にまたがって、10連続奪三振の記録も残した。直球、スライダー、フォークを軸としたシンプルな持ち球にもかかわらず、奪三振率が群を抜く。直球の質が優れた本格派という点では、特に沢村も共通している。脇腹痛が癒え今秋の復調が急。大石と同等に評価している。

 ただ、来季に向けた補強戦略は、新監督が決定するまで明確な方向性を出すのが困難と見られる。球団は阪神SDの星野仙一氏に監督要請を行う方針を固めた。星野氏は野球界に深い人脈を持ち、知識も同様に深い。晴れて「星野楽天」が誕生した場合、星野氏の構想をベースとし戦略を練る。その一方、ドラフトは28日に迫り、残された時間が少ない。蓄積した調査が1位決定の比重を大きく占める可能性は十分ある。

 楽天関係者は「駆け引きがドラフト。正式決定は当日、直前だろう」と語った。大石を1位指名する球団は、現時点で阪神、ソフトバンク、オリックスが予想され、今後増える可能性がある。評価を上げる沢村も競合は必至だ。この日、実行委員会に出席したロッテ石川副代表は「もし星野さんが楽天に来られたら、パが盛り上がりますね」。杜(もり)の都に闘将が乗り込み、剛腕投手が申し子になる-。すべての野球好きが胸躍らせる青写真だ。

 [2010年10月7日9時54分

 紙面から]ソーシャルブックマーク