ソフトバンクからFA宣言した多村仁志外野手(33)が、異例の「オープンカー残留交渉」を受けた。20日、約25万人(主催者発表)を動員したソフトバンクの優勝パレードで、王貞治球団会長(70)の隣のVIP席を用意された。球団に交渉期限を設けられたことが判明したが、王球団会長らから慰留され、あらためて残留も選択肢に入れていることを明言した。

 約25万人から祝福を受けた2・9キロの優勝パレード道中(福岡市内)の多村の隣席に王球団会長がいた。先頭から2台目のオープンカー後部席。この「VIP席」は、実はこの日になって急きょセッティングされたもの。多村と王球団会長がそろって満面の笑みを浮かべながら、沿道に手を振った。時折2人が話すシーンもあった。

 「王会長は03年のときもすごかったと言われていた。今年も日本シリーズに出て、日本一になっていたら、もっとすごかっただろう、と言われてました」(多村)。

 それこそが、来季一緒に日本一を目指そうというメッセージだったかもしれない。多村が「ニュアンスが変わるといけないので、ボクの口からは言えない」と話したように、実際に優勝の喜びを再び体感した1日のスケジュールの中で、王球団会長や笠井オーナー代行から残留を望む言葉をかけられたという。「残留は選択肢?

 はい。交渉を続けていきたい」。宣言残留をしっかりと視野に入れていることを、あらためて口にした。

 ただ、宣言残留を認められFA権行使した多村は、球団側から交渉の期限を区切られ、困惑の表情も浮かべた。「期限を設けられたので…。最初と話が違うので、考えないといけないと思う…」。交渉にあたる小林至取締役(42)は「当事者同士でやりとりします」と話し、多村との交渉期限を明らかにしなかったが、保留者名簿提出の手続きもあり、今月中の返答を求めているとみられる。

 この日、優勝パレードで多村は多くのファンから「(優勝を)ありがとう」の声を受けた。「ファンの声がありがたかった」。球団とのFA交渉で4年契約提示を受け、複数年希望は満たされた。残された隔たりは、チーム打撃3冠ながら基本年俸が推定1億2000万円から微増に終わっている金銭面の評価。球団の示した期限内に残留の結論を出すのか。球団行事で福岡滞在する26日まで、多村の動向から目が離せない。

 [2010年11月21日11時33分

 紙面から]ソーシャルブックマーク