ブレークのにおいがプンプンする。楽天の沖縄・久米島キャンプ第3クール初日の10日、11年目の牧田明久外野手(28)が持ち前のパワーを披露した。フリー打撃に初めて登板した田中の力強い外角直球を、右翼ネットのど真ん中まで運んでみせた。チーム一の強肩が星野監督の目に留まり、今季から右翼にコンバートされた。昨季終盤に1軍定着した遅咲きの右打者が、レギュラー争い参戦ののろしを上げた。

 けれん味のないスイングから放たれたボールは大きな弧を描いた。田中のやや高めの外角直球を牧田は逃さなかった。あらかじめ投げるコース、球種を伝える打撃練習ではある。だが、それを差し引いてもパワーを証明するには十二分の1発だった。右翼席後方のネットを豪快にゆらした牧田は「良い風が吹いていたので狙ってました。理想通りです」と堂々としていた。

 直球を逆方向へ放り込まれた田中は「グッドパワー。びっくりしました」と素直に驚いた。本塁後方から見届けた星野監督は「だからイチ押しと言っただろ!

 オレの目に狂いはない」と言うや、両膝をポンとたたいた。就任直後の昨秋、牧田の打撃センスを見抜き名前を挙げた。マーくん仰天、闘将絶賛の男が現れた。

 努力の先に下地が出来た。もともと守備への評価は高かったが、打撃では対右投手が課題。ケガもありレギュラーは奪えなかった。07年オフ、右ひじ遊離軟骨除去手術を受け転機が来た。強肩を取り戻すため、リハビリで始めた上半身の筋力トレーニングが思わぬ効果を呼んだ。「スイングスピードが明らかに変わりました」。体重85キロで体脂肪率は10%に届く勢い。理想の“細マッチョ”を手にした。だが、これで終わりじゃない。出会いが次の進化を呼んだ。

 昨秋から田淵ヘッド兼打撃コーチのもと、手塚パフォーマンスコーディネーターの助けも受け「骨盤打法」習得に乗り出した。大きなバックスイングは控え、無駄な力を使わず骨盤の回転力をフル活用し打球を飛ばす。牧田は「今までは力で振ろうと。骨盤を使えば力みはいらない」。田中からの1発が開眼を予感させた。

 田淵ヘッドは「腕力じゃなく振る力がついた」と評し「実戦で結果を出してほしい。褒めるのは早い」と続けた。星野構想に「右翼牧田」が入っているからこそ、求めるレベルも高い。本人も「実戦で『なんだ』と思われないように」と呼応した。千載一遇の好機。逃すつもりは毛頭ない。【古川真弥】

 [2011年2月11日9時5分

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