不安を打ち消してみせた。日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22=早大)が27日、札幌ドームで行われたロッテとの実戦形式の合同練習に先発し、5回2安打1失点(自責0)。4月16日が有力なデビュー戦の相手に対して好投。9失点した前回21日の阪神戦からわずか1試合で立ち直り、約2週間後に迫った開幕へ向け再スタートを切った。

 佑ちゃんが失意を振り払い、躍動した。昨年の日本一、主力が並ぶロッテ打線を5回2安打1失点、その失点も失策絡みの自責点0で、しのぎ切った。プロの洗礼を浴びた21日阪神とのオープン戦からわずか6日。残念ながら無観客試合でファンに勇姿は見せられなかったが、不安を一掃する快投だった。「前回より良かった。まだ1回だけなので、手応えは感じていないですけど」と慎重ながらも、ほおは緩んだ。

 精密機械のようにゾーンをフル活用した。内外角、高低を使い、立体的に攻めた。最速142キロも、100キロ台のスローカーブを交え、緩急を使った。ツーシームなどボールを微妙に動かし、丁寧にバットの芯を外した。迫力はなくとも、アマ時代に百戦錬磨だった投球術で翻弄(ほんろう)。4回に5番サブローに左翼フェンス直撃二塁打を打たれ、直後に三塁手の陽の失策で1点は失ったが、公式戦デビュー濃厚な4月16日に対戦するロッテ相手に完璧デモだった。

 独特のリズムも復活した。前回、阪神戦では真ん中にボールが集まり、痛打を連発。この日は制球が定まり「焦らないこと」と心にも刻み、ペースをつかんだ。エース成瀬との投げ合いで、降板した5回までわずか約1時間。球界屈指の左腕を「相手がテンポ良くて狂った。いい参考になりました」とうならせるほど、主導権を握った。

 マウンド同様、陰の後押しでゆとりが生まれた。今回の札幌滞在時に06年夏の甲子園決勝、延長再試合で戦った駒大苫小牧の主砲、亜大・本間篤史と連絡。4月から社会人野球のJR北海道へとステージを移すかつてのライバルと「今度、飯行こう」と約束。発奮材料の1つになった。梨田監督も「落ち着いていたし、全く文句の付けようがない。ローテの一角と考えていいと思う」とあらためて開幕ローテを確約した。次戦は4月3日、札幌ドームでの楽天との慈善試合。「北海道のファンにいい投球を見てもらいたい」。多くの期待の目を安堵(あんど)させる、ダメ押しの快投を誓った。【木下大輔】