<ロッテ4-6楽天>◇12日◇QVCマリン

 楽天のエース岩隈久志投手(30)が、東北にささげる開幕勝利を挙げた。12日のロッテ戦で5年連続となる開幕のマウンドに上がった。先制を許したものの、粘り強い投球で味方の援護を呼んだ。9回に3失点したが、価値ある今季初勝利。この日は30歳の誕生日でもあった。試合後、岩隈の目にはうっすら涙が光っていた。

 目元が光っていた。岩隈は相棒の嶋と左翼へ向かう。お礼を言いたかった。ロッテの大応援団に比べれば人数こそ少ないが、東北から駆けつけてくれたファンもいた。「すごく熱い声援が届いてました。東北で頑張っているみなさんとつかんだ勝利だと思います」。再び、声援に包まれ感極まった。

 粘り強く。東北人の美徳を地でいった。序盤は制球が定まらず、4回には味方の失策もあり1点先制された。地震による中断もあったが「揺れは分からなかった。集中してました」と動じない。尻上がりに安定し、同点に追いついた6回から8回は3者凡退。完投は逃しても、計12アウトをゴロで奪う本領を発揮した。「白星を届けられました」と地元みちのくに思いをはせた。

 クールな外見だが、星野監督をして「あいつは闘犬のようだ。端正な顔立ちをして闘争心はとてつもない」と言わしめる。だが震災後、闘犬に例えられた男の涙腺はゆるんだ。一変したホームタウン東北。遠征先で泣きながら食事をしたこともあった。8日、宮城・女川の避難所を訪れた。傷痕を、現実を、目の当たりにし、さらに目がうるんだ。

 野球選手の自分に何が出来るのか。結論は、勝利だけじゃなく「夢、希望、笑顔を届けたい」だった。開幕前最後の実戦となった6日のオリックス戦。ベンチ裏で漏らした。「これ以上、お客さんのいないところで投げてもしょうがない」。5回3失点した言い訳ではない。オープン戦に代わる無観客試合。もどかしさが募っていた。歓声の届かないマウンドへの偽らざる本音だった。だから、ついにファンの前で投げられたことが、うれしかった。

 星野監督は「6回の攻撃を生んだのも岩隈の粘りだ。合格点もいいところ。バースデーだしな」と、この日30歳を迎えた右腕をねぎらった。指揮官の、仲間の、ファンの気持ちが力になった。岩隈は「何というか…、楽天の1試合目と同じ感じです」。万感抱いた6年前の開幕戦、同じ球場で自ら挙げた1勝から球団史は紡ぎ出される。「今年を特別な1年にしたい」と決意を込めた。その1年は、やはりエースの勝利で幕を開けた。【古川真弥】