<横浜5-4中日>◇12日◇横浜

 中日の新外国人ジョエル・グスマン外野手(26)が豪快な開幕弾を放った。横浜との開幕ゲーム(横浜)で、山本省吾投手(32)から1号3ラン。飛ばないとされる統一球での12球団1号で、パワーを証明した。チームは96年以来の開幕戦サヨナラ負けで、2年連続黒星発進となったが、新助っ人が大活躍を予感させた。

 グスマンのパワーが開幕戦から爆発した。3点をリードされた4回、1点を返してなお1死一、三塁の場面。第2打席がめぐってきた。威圧感たっぷりの構えから、横浜の先発左腕・山本の内角低めの球をすくい上げるように打った。打球は一直線に左翼スタンドへ飛び込んだ。

 「いい感触だった。荒木さん、井端さん、森野さん、和田さん。みんながつないでくれたから打てた」

 開幕戦での来日1号3ランは、今季から導入された“飛ばない”統一球での球界1号でもあった。飛距離はブランコをしのぐと言われ、昨季、米国2Aで33本塁打を放ったパワーは本物だった。

 本塁打の喜びの一方で、今季のペナントレースを象徴するアクシデントもあった。グスマンがベースを1周した直後、横浜スタジアムが突然、揺れ始めた。両軍の選手が球審に揺れを知らせ、試合は一時中断。ナイター用の巨大照明が倒れそうなほどグラグラと揺れるさまに、3週間遅れの開幕に熱狂していたスタンドも静まり返った。日本列島はいまだ震災のただ中にいると実感させられた。

 ただ、グスマンの決意は揺るぎない。「昨日の夜も今日も何回も揺れて正直怖かった。でも、野球に集中するしかない」。トレードマークである後頭部ヘアは15日の本拠地開幕(阪神戦)に合わせて「日の丸型」にカットする予定。そこに込めるのは「がんばれ日本」のメッセージ。他球団の外国人選手は震災や原発への不安から帰国、退団した選手もいるが、グスマンは被災者とともに戦う覚悟を決めている。

 「これでチームが勝てれば言うことはなかったんだけどね…」。グスマンはチームの敗戦を最後まで悔やんでいたが、来日1年目の開幕弾は09年に2冠王を獲得したブランコと同じだ。この日の1発は年俸30万ドルからのサクセスストーリー再現を予感させる。落合竜がドミニカで追い続けた末に獲得した大砲は、期待以上のスタートを切った。【鈴木忠平】