<オリックス5-0ソフトバンク>◇13日◇京セラドーム大阪

 オリックス寺原隼人投手(27)が移籍初戦で、今季12球団初の完封勝利を挙げた。今季から本格使用するカーブを5回まで封印し、古巣を5安打無失点に封じた。かつて158キロを記録した豪腕が、緩急をつけた新スタイルで先発として新天地で再出発。19人を補強したチームの新メンバーが今季初勝利を呼んだ。

 左胸を打つ早鐘を感じながら最後のカブレラも三ゴロに仕留めた。「一番最後に緊張のピークが来た」。今季初登板で9回5安打の完封勝利。お立ち台にも呼ばれた。横浜からトレード移籍したオリックスの寺原。名刺代わりのあいさつとしては文句なしだった。

 「オープン戦からいい感じで投げられて、完封というのは狙っていた」。

 あっさり言ったが、序盤は初陣にかける思いがこもった。「大切にしたのは、“初め”。先頭打者、回の初め、初球とかです」。直球とスライダー主体にベース板を外さない丁寧な制球が光った。走者を出しても、初回1死二塁のピンチは駿太、5回1死二、三塁も李承■の好守に助けられ、リズムに乗れた。

 「駿太が刺してくれ、スンちゃんもいいプレーをして乗っていけた」。

 新しい仲間に背中を押され、今季から本格稼働させた武器を繰り出し、狙っていた完封へと加速した。

 リードする伊藤がひたすら温存したカーブを6回から制限解除。タイミングの合い始めたソフトバンク打線の目先を狂わせた。

 「カーブでストライクが取れたのでうまくいった」。

 かつて158キロを計測した豪腕がみせる緩急つけたスタイル。この日、7回に出した最速148キロの直球と絶妙のブレンドで、3番内川から6番多村までは無安打に抑えてみせた。

 試合直前まで横浜から一緒に移籍した2歳上の高宮の天丼トークで笑いっぱなし。「今日昼ご飯を食べに行ったら、こんな甘エビみたいなのが1本しか入ってなかったそうです」と、いたずらっぽく指を3センチほど開いた。マウンドで見せる存在感とのギャップは、剛柔兼ね備える今の投球スタイルと似通っている。

 19人を補強した新チームの一員である寺原の07年以来の完封が、11年初勝利を呼んだ。「自分の球に自信を持ってストライクゾーンで行け言うたんや」。岡田監督も胸のすく投球にご満悦だった。【押谷謙爾】※■は火へんに華