<広島0-4楽天>◇15日◇マツダスタジアム
防御率0点台に近づいていく。楽天田中将大投手(22)が広島戦に先発し、被安打3で今季初完封した。7回無死二塁のピンチでは、4番栗原からの相手中軸を3者連続空振り三振。自己最速タイの155キロ直球でねじ伏せた。6勝目を挙げ防御率は1・19。この日連続無失点記録が46回でストップした日本ハム・ダルビッシュらを従え、両リーグトップを疾走している。
アウトローいっぱいで155キロを制御した。3球で追い込んだ田中は、「あのボールは今年一番だった」と認めた直球を伏線とし、ウイニングショットを決めようと構えた。打席の天谷が目を丸くし、たまらず打席を外した。赤で埋まった広島ファンがどよめいた。
敵地の空気を変えた時点で勝負あった。7回無死二塁から、3者連続空振り三振。フィニッシュは141キロ、ワンバウンドするスプリットだった。「スイング!
スイング!」と、スタンド最上部まで響き渡るテノールでほえた。右手をクルクル回し、もうベンチへ走っていた。「要所で抑えることは出来ました」と静かに振り返った姿とは別人だった。微妙なジャッジも自分に引き寄せる雰囲気を、3点リードの7回という勝負どころで、マウンドから充満させていった。
先頭丸に二塁打を許し、4番栗原への4球目に暴投三進を許してからギアをいれた。直後、同じ所からワンバウンドのスプリットを落とし空振り三振。両腕をギュッと絞り「オリャッ!」と初めて叫んだ。続く岩本。2球目に155キロのつり球を振らせ、最後はインロー、144キロのスライダーというえげつない配球。「シャアァ!」と、声にならない声でうなった。自ら、徐々に上げていったボルテージは天谷の空振り三振でピークに達した。
マー君=雄たけびは一般的な代名詞だが、むやみに乱発するのかといえば違う。年を重ねるにつれ回数は減り、昨年は数えるほど。この夜のように3人続けて力むのは、近年では極めて珍しかった。「声を出す、っていうか自然に出ちゃうんですが。ここを抑えれば今日は勝てる。自分でそう判断した時ですかね。相手の打者は関係ない。場面ですね」。7回が勝敗の潮目であるとジャッジし、最高の結果を出した。
今季初完封に到達し、防御率を1・19まで下げた。「僕は1年間継続して投げたことがないんです。1年やってからですね」と無関心な反応。だが同時に「知ってますよ。村山実さん、0・98ですね」とも即答した。1970年、2リーグ制後は唯一となる0点台フィニッシュを果たした大投手の名前が、よどみなく出てくる。この日ダルビッシュの無失点記録が止まった。「そうですか…。自分は無理無理」とほほ笑み謙遜し、防御率1点切りも「ダルさんですよ。ダルさん。ダルさんがやるでしょう」とたてるが、両リーグ防御率トップは田中、が現実。四半世紀以上の時を経て“村山超え”にチャレンジできる位置にいる。
数字は傍らに置く。「交流戦が終わったらいきなり西武。ここですね」。眼前の敵にロックオンしている。獅子を退けまた叫ぶ。【宮下敬至】



