<広島1-6ヤクルト>◇10日◇マツダスタジアム

 「バカボン」が連敗を止めたのだ。ヤクルトのルーキー、七条祐樹投手(27)が、7回5安打7奪三振で無失点に抑え、チームの連敗を5でストップさせた。伯和ビクトリーズに所属した社会人時代を過ごした広島で、負けなし4勝目をマーク。新人が先発で4連勝するのは球団史上初になる。2位阪神との差を再び5ゲームに広げる快投で、新人王争いも白熱してきた。

 細長いたれ目をきりりとさせて、「バカボン」七条が珍しいほど激しくほえた。6回2死一、三塁のピンチ。5番丸を5球連続のチェンジアップでフルカウントにすると、外角への145キロ直球で空振り三振に切った。気温32度の暑い広島で、106球目がこの日最速をマーク。「ここで全部出し尽くそうと思った」。グラブをたたき「しゃぁぁっ!」と決めた。

 燃える理由が二重、三重に重なった。チームは今季ワーストタイの5連敗中で、2位阪神に4ゲーム差に迫られていた。広島は伯和ビクトリーズ時代を過ごした第二の故郷だ。昨年の今ごろは、東広島市内のパチンコ店に勤務しながらプロへの道を探っていた。

 三塁側ベンチ上には監督、元チームメートたちが集まった。当時の背番号「14」のユニホームに、「バカボン最高」の文字が揺れる。その中で、7回5安打無失点。「1年間お世話になった場所。何とか自分が流れを変えたかった」とかみしめた。ヒーローインタビューを終えると、テレビの主題歌の有名なフレーズ「♪これで~いいのだ~」の大合唱が始まった。

 114球中、140キロ台はわずか4球でも、低めに集めて打たせて取った。力の配分、抜きどころを知っている。クリーンアップ以外は130キロ台の直球で攻め、要所で力を込める。巧みな投球術の中で、荒木チーフ兼投手コーチは「本当の勝負どころは、向かっていく姿勢が他のピッチャーにはないものがある」と認める。27歳のオールドルーキーが、広島前田健に2試合連続で投げ勝った。

 新人の先発4連勝は球団史上初。七条が先発した試合は7戦負けなしと、ラッキーボーイになってきた。小川監督は開口一番「連敗を止められてほっとしました」と柔和な表情を浮かべた。ルーキーがつかんだ6試合ぶりの勝利で、ベンチに笑顔あふれる風景が戻った。【前田祐輔】