<広島3-6阪神>◇18日◇マツダスタジアム

 阪神金本知憲外野手(43)が、2年ぶりの1試合2発で鉄人健在を見せつけた。先制10号2ランと11号ソロで広島を突き放し、連敗ストップに貢献。右肩の故障から復活した大ベテランに対し、球団は来季も戦力として契約する方針を固め、既に交渉を開始したことが判明。2度の優勝に導いた元4番打者は、これからも存分に勇姿を披露する。

 まだまだ働ける。誰よりも頼りになる。地元・広島の空に描いた2本のアーチは雄弁だった。金本がチームに渦巻くモヤモヤ感を爽快に吹き飛ばした。鍛え抜かれた肉体からはじき出される鋭い弾道、ここ一番での集中力。43歳での2打席連発は史上初の快挙。もっとも、金本という男には年齢ではくくれない異次元の心技体がある。

 「まぐれですね。2本目は真芯ではなかったけど、うまくたたけました」

 2回2死一塁からバリントンの直球に反応。右翼席まで一直線で運ぶ10号2ランで先制した。今年もついに2桁本塁打をクリア。プロ3年目の94年から18年連続に伸ばした。

 2本目は5回。今度は膝元へのスライダーをうまく拾い上げ、右翼最前列へ11号ソロ。1試合2発は09年4月以来だが、1試合あたりの被本塁打率がリーグトップの0・33本だったバリントンからの連発は価値が高い。03年移籍後、阪神で225本塁打、伝説のミスタータイガース藤村富美男を一気に抜き去った。阪神在籍選手としての通算本塁打は歴代5位になった。

 実は11日のヤクルト戦で左脇腹を負傷していた。前カードの中日3連戦は先発から外れたが、15日の第3戦で代打本塁打を放って不安を払拭(ふっしょく)した。この3試合で3本塁打。右肩棘(きょく)上筋断裂の大けが以外にも大小多くのアクシデントに見舞われているが、そんな中で結果を出すところは鉄人の面目躍如だ。

 「チームに貢献するのが一番。今は勝つことが当たり前(一番の目標)。勝たないといけない。勝つための本塁打を打ててよかったです。もう、勝ち続けるしかないです」

 前日、5位広島に完敗し重苦しいムードに陥っていた阪神を救った。真弓監督は「2本打ってくれたので、勝たないといけなかった」とベテランの存在感に最敬礼。残り30試合。不屈の鉄人の姿は、ネバーギブアップの象徴になる。【柏原誠】