<西武7-5日本ハム>◇19日◇西武ドーム

 おかわり君の強みは、「ホームランコース」を持っていることだった。西武中村剛也内野手(28)が日本ハム戦で41号ソロを放って通算200号に到達した。外寄り高めに抜けてきたカーブを逃さず、中村らしい高い放物線で左翼席まで運んだ節目の1発。41発のうち21本は外角高めを仕留めたもの。7打数連続安打で一挙7点を奪った5回の猛攻を豪快に締めくくり、チームを今季初の5連勝に導いて4位に押し上げた。

 3点ビハインドから中島の3ランなどで計6得点。5回、すでにお祭りムードの本拠地を沸かせられるのは1人しかいない。ウルフの初球、132キロのカーブ。やはりと言うべきか、外寄り高め。左翼席へのスタンドインを見届けながら、数日前にしたやり取りを思い出していた。「100本打った時と200号を達成しそうな今と、どこが一番違いますかね?」。節目に王手をかけた中村にそんな質問をしていた。いつもと同じ「う~ん…」という間。いつも以上に言葉を選んでいた。

 中村

 打つべき球と打つべきじゃない球が分かってきたってとこかな。昔はバッターの本能でピッチャーの一番いい球、アウトローをホームランにしたかった。でも無理だって分かった。今も外のボール球を振らされることはあるけど、だいぶ減ってきたと思う。

 投手からすれば攻めの基本とも言える外角低めを切り捨てる。弱気なように見えて実は違う。それが少しでも浮いたりすれば、柵越えできる自信がある。甘く入ってくるのは狙うが、深追いはしない。土井ヘッド兼打撃コーチも「いいピッチャーほど外角低めの制球がいいものだけど、そこに投げ続けるのは簡単じゃないですから」と中村の“悟り”を支持する。

 入団時から飛ばす能力はずばぬけていた。高卒1年目で左翼ポールギリギリに、フェード気味でフェアゾーンへ入ってくるホームランを打って度肝を抜いた。粗さが目立ち、伸び悩んだ時期もある。それでも「やればすべてが自分の引き出しになる」とどんなアドバイスにも素直に耳を傾け、1度は実践する柔軟性があった。転機は初めて本塁打王に輝いた08年。当時の首脳陣に壁に正対した状態でバットを振らされ、腕のたたみ方をたたき込まれた。タイトルを取ったことで周囲の評価も変わり、自覚が芽生えたという。

 そして、今なお進化している。中村の打撃を見続けてきた同期入団の栗山は証言する。「今年は膝の使い方がうまくなった。低めの球に重心を落として、下半身の粘りで打てている」。まだまだ、もっと打てる。確信があるから、思い出に残る1本を聞かれて主砲は首を振った。「まだ野球人生が終わったわけじゃない。振り返ることでもないと思う」。その目はもう、201本目の放物線を追い求めていた。【亀山泰宏】