<ヤクルト8-4阪神>◇27日◇神宮
まさに優勝するチームの底力だ。ヤクルトが阪神に逆転勝ち。二転三転の展開に終止符を打ったのは、「新3番」打者の1発。1点差を追いついた6回、6年目の川端慎吾内野手(23)がプロ初のグランドスラムを放ち、真弓阪神を打ち砕いた。ナゴヤドームでの中日4連戦で1勝3敗と負け越したが、これこそV字回復だ。
神宮に吹き始めた秋風なんてものともしない。川端が放った打球が、ヤクルトファンが待つ右翼スタンドに向かって伸びた。同点に追い付いた直後の6回2死満塁。真ん中高めに入った134キロの直球をコンパクトに振り抜いた。
ポール際への打球は、切れずにスタンドに飛び込む。一塁を回ると、拳を振り下ろして喜びを表した。高校時代もなかった、人生初のガッツポーズだ。「ずっと震えてました。今日は寝られないかもしれません」。一塁側ベンチでは、40歳のベテラン宮本が両手を上げてジャンプした。チームメートの手荒い祝福が待っていた。
3番を務めて43試合目で放った、人生初の満塁本塁打だ。カウント2ボール。「押し出しは嫌だろうし、ストライクが来る」と読み切った。直前の1死満塁では、2番田中が初球を打って遊ゴロに倒れた。重いムードを特大弾で振り払った。
市和歌山商から、入団して6年目。遊撃手の大先輩、宮本の門下生だ。1月には松山・坊っちゃんスタジアムで行う自主トレに3年連続で参加した。厳しいトレーニングに尻込みし、参加を打診されても少し考える選手が多いが、初参加した時から即答だった。今季はここまで4失策。定評があった打撃に加え、守備力も向上。宮本からは「素直さとずぶとさを持っている。すごい選手になる可能性はある。今はまだですけど」と笑顔で祝福された。
妹の友紀(22)は女子プロ野球「京都アストドリームス」に所属する。日本で唯一の兄妹プロ野球選手だ。子供のころは近所にある田んぼや広場で一緒に練習を積んだ。「ずっと後ろをついてくるんですよね」。優しい兄。今季妹が初観戦した8月18日の横浜戦では、先制適時打をプレゼントした。
今季4号が満塁本塁打。1号がソロ、2号2ラン、3号3ランと、野球人生のように着実にステップアップした。小川監督は「川端は力強くなった。本当に良く打ってくれた」。ベンチの出迎えの最後は、宮本と抱き合った。こんな劇的な勝利があれば、もっと大きな喜びだって、きっともうすぐやってくる。【前田祐輔】



