<楽天1-7西武>◇27日◇Kスタ宮城

 地力のあるチームの底力だ。西武が涌井秀章投手(25)の粘投で勝率を5割に戻した。最下位に低迷していたチームの象徴となってしまっていたエースが7回6安打1失点で踏ん張り、6月5日以来の5割復帰。9年ぶりの10連勝で9月は18勝3敗2分けとなり、最大15あった借金を完済した。クライマックスシリーズ(CS)を争う3位オリックスとのゲーム差は依然縮まらないが、10月4日からの直接対決3連戦まで1歩も引かない。

 10連勝という節目は、やはり涌井に回ってきた。6月5日以来の5割復帰がかかる試合。9連勝中の勢いを止めるわけにはいかなかった。「勝ったから(結果的にはチームのいい流れに)乗っていけたんじゃないですか?」。人ごとのように言ったが、かすかに笑っていた口元が少しは納得していた証しだった。

 ここまで7勝。チームが最も苦しんでいた6月から8月にかけてはわずか2勝と最下位低迷を象徴するように勝てなかった。それがここに来て、涌井らしいスピンの効いた直球が戻ってきた。球速は140キロ前後と平凡でも、威力はスピード表示以上。コースを狙いすぎなくていいから初球で簡単にストライクが取れ、カーブやチェンジアップなど多彩な変化球もより有効になる。

 2カ月ぶりの6勝目を挙げ、涌井自身の流れが変わり始めたのが9月1日の楽天戦。その頃から実は“裏テーマ”に取り組んでいる。「試合で投げながら、右肘を上げる」。5点リードの6回に突如として制球に苦しみ押し出し四球で1点を献上したのも、まだまだフォームを微修正中だから。腕の軌道などを確認しながらベンチに戻るのは見慣れた光景だが、今はいつも以上にチェックに余念がない。

 ようやく見えてきた復活への道筋。実はもっと早い段階で気づいた人がいる。中学まで息子のキャッチボール相手を務めるなどマンツーマンで指導を続けた父孝さんだ。母たつ子さんが7月に話していたことがある。「この間も主人が『フォームが気に入らない。ちょっと肘が下がってる』って言ってました。息子から何か言ってきたら直接言うとは思うんですけど」。結局、静かに見守る父から息子へ言葉として伝えられることはなかったが、思いが届いたかのように、涌井は肘を上げようとしている。

 打線が小刻みに点を加え、エースが踏ん張って10連勝。渡辺監督は「我々の望んでいた戦いの形。勝利への執念が出ている。借金はなくなったけど、ドンドン上を目指さないと」と言いきった。チームはもちろん、涌井もがぜん乗ってきた。【亀山泰宏】