<楽天1-7西武>◇27日◇Kスタ宮城

 東北のファンが泣いていた。楽天が本拠地で西武に完敗した。今季ワーストタイの4失策。力負けでなく自滅だった。シーズンの集大成を見せなくてはならないこの時期に、最もふがいない部類に入る試合を行った。12球団で一番温厚なKスタからは罵詈(ばり)雑言が飛んだ。「底力」をうたって始まったこの1年を、絵に描いた餅になどできない。

 「いいかげんにしろ」「もうやめろ」はまだ良かった。「もっとエラーしてみろ」のヤジに、諦めが冷笑へと昇華した東北ファンのやるせなさがギッシリ詰まっていた。9回、途中出場の阿部が平凡な遊ゴロをはじき失点。試合は決まっていたが、この日4個目の失策が、ゲームをどこまでも締まりないものにした。

 今季のリプレーが凝縮された敗戦だった。2回。先発塩見が西武の高卒3年目、浅村に直球をけれん味なくフルスイングされる。打球は十二分に伸び、左中間最深部に届いた。8号2ランで先制されると、ベンチには早くも重い空気が充満した。相手先発の涌井はボール先行で本調子ではなかったが、3回松井稼、5回は嶋が併殺打で好機をつぶした。高須の失策が絡むなど3点を追加された6回、中村の押し出し四球で1点を返すのが精いっぱい。獅子に10連勝目を献上した。

 星野仙一監督(64)は「若いやつも年寄りも情けないな。ダメだ、このチームは」と言い、田淵ヘッドコーチは「試合が終わっていないのに自分の成績を上げるわけでもない。試合が終わるまでは…。仕事なんだ。選手も、我々も」と言った。ゲームをつかさどるのはベンチの役目である一方で、グラウンドでの局面は、個と個の勝負の集積である。得点圏で1本出ないのは投手に対する力負け、痛打を食うのは、打者に対しバッテリーが負けたから。エラーは言うまでもない。ベンチがタクトを振る前段で、西武の選手個々人に、技術が劣っている。

 西武のレギュラーたちはこんな日々を送ってきた。キャンプでは早朝からバットを振り、夜間練習もこなした。寮生活を送る浅村ら若手は本拠地での試合後、隣接する室内練習場に直行。コーチ付き添いのもと、日が変わるまで打ち込みを続けた。10年目の同期、栗山と中村は互いの打撃理論をたたかわせ、相手主力の打撃練習を洞察するなど研究に余念がない。若い選手は主力が節制と練習の鬼だからこそ慕って質問し、自然と野球に打ち込んでいる。正しい積み重ねが分厚いチーム力となり、胸突き八丁で開花している。

 心技体の「心」は補える。球場を去る小学生たちを「今日も打てなかったねぇ」と落胆させてはいけない。我慢強く温厚なみちのくの野球好きを、悲しませてはいけない。【宮下敬至】