<西武4-4ソフトバンク>◇16日◇西武ドーム

 届きそうな、あと1点が遠かった。9回に西武中島裕之内野手(29)、ホセ・フェルナンデス内野手(36)の適時打で2点差を追いついた。なおも2死二、三塁。一打サヨナラのチャンスで、この日2安打の3年目浅村。4回には一時同点となる適時三塁打を放ち、左中間への当たりで三塁に頭から突っ込んだ。体ごとCSへの執念を表現した20歳。気持ちをこめた最後の打席は中飛に終わり、本拠地は大きなため息に包まれた。

 残り3戦全勝なら3位確定の一方、この日勝ち以外なら自力3位が消える。よく追いついたが、引き分けは負けに等しい。先発涌井で、逃げ切らなければいけない展開だった。2-1で迎えた6回、下位打線に不覚をとった。福田と明石に連続適時打を浴び、逆転された。渡辺監督は「気持ちが弱い。本塁打が考えづらい打者。打たれた後、トップギアに入れても仕方ない」とエースの背信投球に、いら立ちを隠せなかった。

 涌井の不振が、チームの低迷に直結した。今年最後の先発でも結果を出せず、9勝12敗。今後、中継ぎ待機する可能性はあるが、6年連続2ケタ勝利は絶望的となった。開幕前から右肘痛に悩まされ、登録抹消された5月の精密検査で遊離軟骨が見つかった。試行錯誤の苦しい投球から抜け出せず、今オフにはクリーニング手術を検討するほどだ。試合後は報道陣の質問をかわし、足早に車に乗り込んだ。ふがいなさは、本人が一番感じている。

 残り2試合、1つでも負ければ4位が確定する。CS進出には、最終戦を残すオリックスの引き分け以下が条件。状況は極めて不利だが、渡辺監督は「何とか、がけっぷちで踏みとどまった感じ。いろんなミスが出たわりに、引き分けまで持ち込めたのはチャンスがある」と望みをかける。可能性がある限り、何が起こるか分からない。土壇場で意地を見せた選手を信じ、最後まで戦い抜く。【柴田猛夫】