<パCSファーストステージ:日本ハム1-8西武>◇第2戦◇30日◇札幌ドーム

 西武が下克上への第1関門を突破した。クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで日本ハムを2試合連続の逆転勝ちで撃破した。1点を勝ち越した直後の8回無死一、三塁で投入された石井一久投手(38)が、完璧な火消しを見せて無失点でしのいだ。レギュラーシーズンは6勝9敗と不本意な成績に終わったが、ポストシーズンに強いベテランが勝負どころで奮闘。ソフトバンクと対戦するファイナルステージ(11月3日開幕)に3年ぶりの進出を決めた。

 復活した剛腕が、ファイナルへと続くわずか1点のリードを死守した。勝ち越した直後の8回無死一、三塁で石井一がマウンドに上がる。「投げる前から三振しかないと思った」という糸井をスライダーで空振り三振。4番小谷野には低めの変化球を引っかけさせ、稲葉はこの日最速タイ139キロで左飛に仕留めた。140キロに届かなくとも球威、迫力十分の直球に切れる変化球。クリーンアップを迎えたしびれる場面を9球で切り抜けた。

 10月2日のソフトバンク戦で先発したのを最後に、中継ぎへと配置転換された。そこまで6勝9敗、防御率4・38。不本意な成績で持ち場を移ることになった左腕を、渡辺監督はセットアッパーとして起用した。「先発で迷惑をかけたので…。ブルペンに入ってもいいポジションを与えられた。出る時はしっかりやろうと思った」。意気に感じて奮闘する男を同監督は「間違いなく1点もやれない状況で、よく一久がカバーしてくれた。流れが変わった」と手放しで褒めた。

 「僕は中継ぎに入って良かったと思います」。ある時、小野投手コーチにそうもらしたという。石井一といえば、典型的なパワーピッチャー。しかし、今季の先発では豊富な経験で培った投球術に頼りすぎるきらいもあった。それが1イニング限定でがむしゃらに腕を振ることで、本来のボールがよみがえりつつある。「西口さんと顔を合わせた時、しっかり投げないとと思った」「気持ちが強くなければいけない。リリーフを尊敬してます」。先発の勝ちを背負うという中継ぎ特有の重圧も、日米通算20年目のベテランを刺激。救われた西口は「2人で77歳。オジサンパワーで抑えて、何回お礼を言ったか分からない」と最敬礼した。

 10月1日、ソフトバンクに目の前で胴上げを許し、渡辺監督はミーティングで言った。「残りの試合は全部オレに預けてくれ。みんなは勝敗を気にせず、思い切りプレーしてくれればいい」。全体に声をかけたのはこれが最後。マジック4から逆転V逸、CSもロッテに2連敗した昨年は「オレがいろいろ言いすぎた」という反省からだ。今、確かな手応えを感じている。「士気が上がっている。去年とはチーム状態が全然違う。強いチームが待ち構えているけど、失うものはない」とキッパリ。勢いのままに、優勝チームへ挑戦状をたたきつけた。【亀山泰宏】