巨人清武英利GM(61)が、渡辺恒雄球団会長(85)にかみついた。11日、都内の文科省記者クラブで記者会見を行い、渡辺会長が来季のヘッドコーチにOBの江川卓氏(56)を招聘(しょうへい)するプランを進めていることを暴露した。チームはすでに岡崎郁氏(50)をヘッドコーチとして宮崎秋季キャンプを実施している。現チームの人事を翻すプランに対して清武GMは全面的に反対。自身の解任をも辞さない覚悟で、渡辺会長の翻意を求めた。

 清武GMの声明文は攻撃的な文言の連続だった。「不当な鶴の一声で、愛する巨人軍を、プロ野球を私物化するような行為を許すことはできません」「プロ野球界におけるオーナーやGM制度をないがしろにするだけではなく、内示を受けたコーチや彼らの指導を受ける選手を裏切り、ひいてはファンをも裏切る暴挙」「酔ったうえで(中略)事実に反する発言を記者団にすることは経営者としても許されないこと」。

 球団初のGM職に就任した今年6月7日。同日に、読売新聞グループ本社では、長年にわたって経営を支えた内山斉グループ本社社長の退任が発表された。渡辺会長の権力の大きさを、あらためて示した人事だった。そんな、超の付くワンマン会長への反旗。清武GMの解任は避けられない。

 7日に「専務取締役球団代表、オーナー代行、GM兼編成本部長」という複数兼務する役職のうち「GM職」を外され「専務取締役球団代表、オーナー代行兼総務本部長コンプライアンス担当」となる人事の内示を受けたと明かした。桃井オーナー兼球団社長はオーナー職を外れる内示もあったという。だが、この日の批判会見を経ては、内示どころではない。「これからどのような立場になろうとも」とも言う。職を辞す覚悟の上での会見というのは明らかだった。

 声明の冒頭、渡辺会長から「江川氏のヘッドコーチ招聘プラン」を伝えられたと暴露。GMとして進めた組閣は10月20日、渡辺会長に了承されたと主張する。秋季キャンプでは、2年目の岡崎ヘッドコーチも含めて新体制がスタートしている。それを根底から覆すプランを頓挫させるために、自身の職を賭した格好だ。暴露の代償として「江川プラン」は困難になった。

 会見の途中、時折、声を詰まらせ、涙をぬぐった。必死の訴えだったが、桃井オーナーの理解は得られなかった。同オーナーは「かばえない」と、あっさりと距離を置いた。文科省で会見をし、プロ野球全体の危機と問題提起した格好だが、結局は読売内部のお家騒動。今後に関しては、渡辺会長の対応次第と同席した吉峯弁護士は言い、同GMは「自ら辞めるつもりはありません」と言い切る。ただし、桃井オーナーの援護もなければ、四面楚歌(そか)となるのは避けられない。【金子航】