広島前田智徳外野手(40)に「300号“超え”」指令だ。松田元オーナー(60)が14日、広島・廿日市市の大野グラウンドを訪れ「あと6本(本塁打を)打ってやれ」とハッパを掛けた。前田智は現在通算295本塁打。大台目前だが、08年以降の4年間は、わずか6本塁打にとどまっている。総帥直々の注文に23年目のベテランが奮い立つ。

 前田智のホームランが見たい。そして、大台に乗せてほしい。新人合同自主トレを視察に来た松田オーナーが大野寮に到着したときは、新人はロードワークで外出中。だが、前田智も敷地内でトレーニングをしていることを伝え聞くと、一目散に23年目のベテランのもとへ足を運んだ。

 「あと6本打ってくれ」

 時間にすれば5分ほど。オーナーと前田智のトークは笑いが絶えることはなく、濃密だったようだ。最後にオーナーが、ハッパを掛けた。通算295本塁打を放っている男に、300本“超え”を期待した。

 現状もしっかり把握している。08年以降では6本しか上積みがない。昨季は52試合出場も0発。最後にアーチを架けたのは、10年5月21日のソフトバンク戦(福岡ヤフードーム)までさかのぼる。代打での出場が増えた08年以降は、1発を求められる打席は少なくなった。むしろ、勝負どころでの1点を“もぎとる”打撃を見せている。

 松田オーナー

 いつも、あと1点ほしいところで出てくるからね。その1点を、どうにかして絶対取ってくれる。存在感があるね。

 昨季も年間11安打ながら13打点と、打点数が安打数を上回った。代打の切り札として、相手チームに与える威圧感は大きな戦力だ。

 この日も、ティー打撃や、ノックなどで約6時間のトレーニングに励んだ。前日13日には、北別府氏、故津田氏と広島の偉大な先輩2人が殿堂入り。プレーをともにしたチームメートの快挙に、前田智流の言い回しで募る思いを口にした。

 前田智

 恐れ多くて私にはコメントできません。私には無理です。

 広島が最後にリーグ優勝を果たした91年は、津田さんが引退した年。当時2年目だったチーム最年長は、快挙とともに今度は後輩を歓喜に導いていく。【鎌田真一郎】