巨人の「無敵バッテリー」が、初顔合わせした。宮崎キャンプ第1クール最終日の5日、ソフトバンクからFA移籍した杉内俊哉投手(31)のブルペン投球をキャプテン阿部慎之助捕手(32)が移籍後初めて受けた。開幕投手候補でもある左腕は直球にスライダー、チェンジアップを交え64球。日本代表として参加した00年シドニー五輪からの「旧知のバッテリー」が、3年ぶりの日本一奪回に向けて始動した。

 「まだまだ、こんなもんじゃないよ」。ブルペンを後にした阿部が自慢げにささやいた。

 「いいキャッチングをしてもらった。(阿部とのバッテリーは09年の)WBC以来ですね」。杉内が誇らしげに女房役をたたえた。

 ブルペン入りした杉内が29球を投げ終えたときだった。阿部が投手陣を一通り見渡すと「杉内!

 いこうか!」と、どっしり腰を下ろした。初球は直球。首を縦に振って「おぉー。いいねー」と、マスク越しに口にした。そこからは“ショータイム”がスタートした。投球のテンポ、投げ分けるコースと球種…。阿部が杉内に出した要求は「力感を出さないこと」と、球威よりもキレだった。

 2人が初めてバッテリーを組んだのは、ともにアマチュア時代の00年のシドニー五輪で、08年の北京五輪でも、ともに代表入りした。キャンプ前に杉内の特徴を問われた阿部は「付き合いが長いからね。全部、分かってるよ。とにかく真っすぐのキレ。そこはかなりすごいよ」と即答するほどだ。特に統一球導入後に、阿部がリード面で最重要視していたのは、外角低めへの直球。反対方向への本塁打が確実に減少したからだ。最後に投じられた外角球。「あの球。あれが一番いい」と、大きくうなずいた。

 阿部から「頼んだぞ」と声をかけられた杉内は「阿部さんが来たから変なピッチングはできないと思って投げた」と、充実感に浸った。宮崎での合同自主トレを翌日に控えた25日、電話で「V奪回」を誓い合った2人。阿部が言う。「杉内には俺に遠慮しなくていいぐらいの経験があるんだし、2人で話し合いながらやっていければ」。すでに信頼関係は固まっている。【為田聡史】

 ◆杉内-阿部のバッテリー

 00年シドニー五輪、08年北京五輪、09年WBCに2人は出場。00年は杉内が三菱重工長崎、阿部が中大の時代で、予選リーグの南アフリカ戦でバッテリーを組んだ。阿部が5番捕手でフル出場、杉内は2番手で1イニングを投げている。08年は1次リーグのオランダ戦で杉内-阿部の先発バッテリーが実現。杉内が7回を無失点に抑え勝利投手となった。09年WBCは、本番では2人のバッテリーはなかったが、オーストラリア代表との練習試合で組んでいる。