<オープン戦:中日3-4日本ハム>◇13日◇岐阜

 山崎独走にちょっと待った!

 腰痛のため調子を崩していた中日トニ・ブランコ内野手(31)がオープン戦1号を放った。日本ハム戦に6番DHで出場し、1打席目に左翼越えの130メートル弾。開幕4番が濃厚な山崎武司内野手(43=楽天)に大きな刺激を与えた。

 今季の21打席目。ようやくブランコにホームランが飛び出した。2回2死。日本ハム・ケッペルの145キロ初球、シュート気味に手元に食い込んできたボールを丸太のような太い腕でたたいた。打球は岐阜・長良川球場の左翼スタンド中段に一直線。昨季まで竜の4番を張っていた男が、意地のフルスイングで獲物をとらえた。

 「初球から積極的にいこうと打席に入った。うまくバットが内から出た。少しずつ調子は上がっているよ」

 悩みは深かった。キャンプ終盤に腰痛を発症し、数日間は痛みが取れずに首をかしげた。名古屋に戻ってからも思うようなスイングができず、焦りだけが募った。2日広島戦から実戦出場を開始したが、この試合までの打率は1割7分6厘、本塁打ゼロ。オープン戦で2本塁打を放っているライバル山崎に独走を許していた。

 指をくわえてみていたわけではない。巻き返しの秘策は「マートンバット」だ。10日オリックス戦(京セラドーム大阪)の試合前にバルディリスから阪神マートンも使用するオールドヒッコリー社製のバットを薦められて注文。岐阜の宿舎に届けられた3本のバットを携え球場入り。早速、新“相棒”でアーチを描いた。

 「最初のホームランはいいけど、最後の打席はまた戻ってしまった。始動を早くしてボールをよく見ることが大事。監督がチャンスを与えてくれているので、なんとかしたい。とにかくチームの助けになりたい」

 追いかける立場は変わらない。7回、9回と2打席連続で空振り三振。変化球に泳がされ、真っすぐには差し込まれる。まだ、投手を震え上がらせる本来の姿ではない。現時点で開幕4番には山崎が座る可能性が高いが、このままではプライドが許さない。開幕まで残り10試合。必死のアピールはこれからも続く。【桝井聡】