<日本ハム2-1ロッテ>◇26日◇東京ドーム

 さあ残り1本だ!

 日本ハム稲葉篤紀外野手(39)が、通算2000安打に王手をかけた。大台へあと2本として臨んだロッテ戦で、6回2死から勝ち越しの4号ソロを右中間スタンドへたたき込んだ。これが通算1999本目の安打、249本目の本塁打となった。史上39人目の大記録達成へ、舞台は明日28日からの楽天戦に移る。チームは貯金を今季最多の8とし、首位をキープした。

 勝利に沸くベンチ裏、浮かない顔の2人が稲葉の元を訪れた。「すいませんでした」。最後の攻撃となった8回、目の前で三振を喫した中田と先頭で凡退した田中だった。ネクストサークルで出番を待ったが、打席が回ってこなかった稲葉は「変に気を使わせてしまっている。迷惑をかけてるなぁ、早く打たないとと思った」。苦笑いで後輩たちの気持ちを受け止めた。

 もしも打席がまわれば…。そう期待を抱かせるには十分な、衝撃の1発が同点の6回に飛び出していた。ロッテ渡辺俊の初球を迷いのないスイングでたたき、打球は右中間席中段まで飛んだ。「まさかホームランとは予想していなかった。監督の誕生日にホームランを打てて、勝てて、よかった」。2000本安打、そして250本塁打にあと1と迫る快打。ダイヤモンドを1周する主役に、スタンドはスタンディングオベーションを送った。

 重圧につぶされることはなかった。「試合の大事な一打でもなく、走者もいないのに歓声で…。変なプレッシャーを感じた。あぁこれなんだな、と思った。独特」。打席に向かうだけで降り注ぐ拍手に戸惑い、1、2打席目は思うような打撃ができなかった。それでも「もう打てなくてもしょうがないや」。しっかりと気持ちを切り替え、自分を取り戻した。一気の達成とはならなかったが、球場に足を運んだファンを満足させる大アーチだった。

 貢献活動も大詰めを迎える。09年6月から始めたのが、小児の救急救命活動に必要な医療資機材を、北海道内72カ所ある病院や消防本部に寄贈する取り組み。自ら病院に足を運び、医療機材やドクターヘリを自分の目で確認して始めた活動だ。1安打につき1万円を積み立てることにしているが、この金額設定は、2000本安打でちょうど全施設に行き渡るようにするため。こちらもいよいよフィナーレを迎える。

 今日27日は仙台へ移動し、明日から楽天3連戦。「疲れてしまったよ。明日はリラックスして、もう1度気を引き締めてやっていきたい」。積み上げてきた歴史を考えれば、達成までの余韻を、少しだけ楽しむ時間があってもいい。【本間翼】