<ロッテ3-2ソフトバンク>◇12日◇QVCマリン

 ヒーローは思わず顔をしかめた。延長11回裏、1死満塁。左中間にサヨナラ犠飛となるフライを打ち上げたロッテ角中勝也外野手(24)は、一塁付近でチームメートからたたかれ、蹴られ、ジュースをかけられた。「ジュースはいかんでしょ」。ベタベタの全身に、喜びもしぼんだ。

 変則左腕、森福との左対左の勝負でもベンチの期待は大きかった。「あの場面でインコースはないと思って、思い切り踏み込んでいった」。打ったのは外角のスライダー。そういう打撃ができるから、西村徳文監督(52)もそのまま打席に送り出した。

 左投手は苦にしないが、森福は嫌いなタイプの投手だった。「三振でも次の今江さんがなんとかしてくれるだろう」と、気持ちを楽にできたのが殊勲打につながった。

 この一打で、首位の座を守って交流戦に入ることも決まった。西村監督は「いいですね。やっぱりサヨナラは…」と、今季初となる劇的勝利の喜びをかみしめた。