<オールスターゲーム:全パ1-4全セ>◇第1戦◇20日◇京セラドーム大阪

 大胆な試運転だ。球宴第1戦で登板したソフトバンク森福允彦投手(25)が、予告通りのアンダースロー披露で貫禄の3者斬りを決めた。7回に全パの5番手で登場。巨人長野に対して途中でサイドから下手投げに変身して、空振り三振を奪った。2度目の球宴で遊び心を取り入れて楽しみ、残り試合でオーバースロー挑戦の爆弾発言も出た。

 ありえない笑みを漏らした。7回。先頭打者の長野を2球で追い込んだ森福の口元が緩んだ。数日前から考えていた“瞬間”アンダースロー転向。ワクワク感を隠せずにいた。打者に背中を見せる独特の構えで右足を踏みだすと、いつものサイドからちょっぴり左腕を下げたフォームで外角へズバッ。バットが空を切った。

 「自分では結構下げたつもりでしたが、力んで上がったかも。三振取れちゃいました。シュートです」

 2死から和田に投げた10球のうち3球も下手投げ。「シーズンと違って、12球団のファンで盛り上がっていましたね」。各球団カラーがちりばめられたスタンドが心地よく、昨年に続く球宴で遊び心を取り入れ、1回無安打無失点。しっかりと楽しむことができた。

 「リーグ戦ではできないし、ちょっとやってみよう」と、応援してくれるファンへ球宴限定のサービスだった。馬原とファルケンボーグが戦列を離れ、代わりに守護神を任されるシーズンでは絶対に許されない試投だろう。

 1カ月前は余裕はなかった。6月6日巨人戦の9回に村田に決勝犠飛を浴びた。「あの調子が悪い時期はマウンドに上がるのも嫌で、怖い部分もありましたよ。ビデオを見ても何がダメか分からない。イメージと体が一致しない感じでしたね」。ストッパーという仕事の喜びより恐怖が増した時期だ。逃げず、結果を出すことで感覚を取り戻し、いつしかその恐怖感は和らいだ。現在リーグ3位の14セーブ。トップのロッテ薮田と3差で「狙っています」と後半戦はセーブ王のタイトルも意識。自らに重圧をかけても抑え切る自信があるからこその発言だ。

 リーグ戦の重圧から解放されたつかの間の“休暇”。残り2試合ではさらなるプランも用意した。「次は上からワインドアップですか。何か考えますよ」。球界を代表するサイドリリーバーがアッと驚く変則フォームでまた球場を盛り上げる。