<巨人4-1阪神>◇9日◇東京ドーム

 手負いの主将が虎を沈めた。両足首の違和感で「4番一塁」に入った阿部慎之助捕手(33)が、8回に勝ち越しの13号3ランを放った。1回に失った1点が遠い展開だったが、坂本の犠飛で追い付いた直後の初球を、一振りで仕留めた。5連勝で貯金は今季最多の27。阿部を先頭に首位をひた走る。

 手負いの主将、阿部が「4番」の役割をまっとうした。同点の8回2死一、三塁。2番手筒井の初球を豪快にしばいた。真ん中高めの直球。「打てそうなボールは全部、振ってやろうと。ボールをたたくことを意識した」と、弾丸ライナーで右翼席に運んだ。6月29日以来となる、13号勝ち越し3ランで試合を決め「越えそうかなとは思ったけど、いくとは思わなかった」と興奮気味に振り返った。

 7月28日広島戦で痛めた左足首も完治には至っておらず、前夜は、プレー中に右足首にも痛みを訴え、途中交代。原監督が「捕手は足に負担がかかるので一塁にした。彼にとってもチームにとっても最善策でした」と説明したように、この日は捕手ではなく「4番一塁」で出場した。一塁の守備は昨年9月3日ヤクルト戦以来。スタメンとなると、10年7月9日中日戦以来の出場だった。

 痛みを押しての出場で、ダイヤモンドを回るときも、足を引きずっていた。両足首ともサポーターで固定し「これじゃあ、病人みたいだね…」と、自ら飛ばしたジョークも笑えない。だが、一振りで決めるのが4番の仕事だ。「(杉内)俊哉も球数が多い中、頑張っていたからね」と、バットで“女房役”を務めた。

 主将の1発は杉内の負けを消し、ルーキー田原に初勝利をもたらした。原監督も「久しぶりにスカッとしましたね。百戦錬磨、見事なスイングでした」と賛辞を贈り、「ここのところ我慢して粘って、苦しい試合が続いている。このゲームを機に好転すればいいですね」と、起爆剤的な効果にも期待を寄せた。阿部が、自らの存在感同様に、大きな、大きな1発を放った。【為田聡史】

 ▼阿部が6月29日中日戦以来、自身29試合ぶりの1発。阿部にとって本塁打が28試合も出なかったのは、01年4号→5号の35試合に次ぎ、06年0号→1号の28試合と並ぶ自身2番目のブランクだった。阿部は1発の出なかった期間も勝利打点は4度あり、この日で今季12度目。セ・リーグの勝利打点ランクでは森野(中日)に並びトップに立った。