<西武0-4ソフトバンク>◇21日◇西武ドーム
重圧のかかる場面でこそ、ソフトバンク小久保裕紀内野手(40)は冷静だった。そしてワンチャンスで決めた。「ノーヒットできてて(走者が)二塁にいった時点でここが勝負と思った」。7回2死まで岸の前に無安打無得点。長谷川が中前打、ペーニャが四球で粘ってつくった2死一、二塁の舞台だった。
カウント2ボール2ストライクから2球ファウルでしのぎ、高めに浮いたスライダーを左前へ。「最後にうまくバットに引っ掛かってくれた」と振り返った。9回にも4点目となる左前適時打を放ち、マウンドから岸を引きずり降ろした。
14日に今季限りでの引退を表明して以降、初スタメンだった。引退を決意した際、秋山監督に「僕の身の振り方は気にせずにされて下さい」と告げ、登録抹消も受け入れるつもりだった。首脳陣の期待にこたえるべく、「先発でも代打でも準備はしっかりするよ」と10日ぶり先発で結果を出した。ただ「久しぶりのスタメンで8回裏の守備で足つったわ」と笑わせた。
前日20日は都内で作家の北方謙三氏と懐石料理をともにした。代表作「水滸伝(すいこでん)」を愛読し、続編にあたる「楊令伝」では後書きも担当した間柄。好物のシングルモルトウイスキーを片手に語り合ったぜいたくな時間は、エネルギーを高めてくれた。「うれしかった」と深夜に手帳を開き、日本を代表する作家の言葉を記した。体と心の充実ぶりを示す2安打2打点だった。
引退表明からチームは今季初の6連勝。「勝手にやめるって言ってから6連勝。伸びてくれればうれしいね」。“混パ”の主役がようやくエンジン点火した。【押谷謙爾】



