<ヤクルト5-1広島>◇29日◇神宮

 三塁ベース上のヤクルト宮本慎也内野手(41)が、しきりに打者上田にジェスチャーを送った。両手を使い、「ベルトより上」と身ぶりを交えて繰り返す。1点を追う4回2死満塁、上田は内角のカットボールに、詰まりながら右前に落とした。2者が生還すると、続く田中も内角高めのシュートを左翼線に運んだ。この回3点を奪い、天敵の広島野村を4回KOした。

 今季の対野村はここまで5試合対戦し、防御率1・03と完璧に封じられていた。野村の対策は、低めの変化球をいかに見極めるか。宮本は「田中にも言ったんですけど、ゾーンを上げれば、詰まってもヒットゾーンに落ちる可能性が高くなる。自分もそういうふうに臨んだ。彼はストライクとボールの見極めが大事ですから」と言った。

 ピンチではマウンドに歩みより投手陣に声をかけ、ベンチでは野手にアドバイスを送る。上田は「(宮本)慎也さんが、低めは捨てていけって、ずっと三塁から伝えてくれた。低めを追いかけてしまう癖があるので助かりました」と感謝した。今まで当たり前だった光景が、戻って勝った意味は大きい。

 宮本が右肋(ろく)軟骨骨折で離脱した7月28日、チームは38勝38敗の勝利5割で3位だった。この1カ月、9勝16敗で借金7になった。リーダーを失ったチームは、踏ん張りながらも少しずつ借金を積み重ねていた。

 敗れれば、CS争いから大きく後退する一戦。天敵相手に2回に先制点を許す中、逆転劇のきっかけをつくったのも宮本だった。4回無死から、野村のチェンジアップを中前に運んだ。打者9人で3点を奪う攻撃の始まりだった。

 これで広島に再び2・5ゲーム差に迫った。宮本にとっては復帰後初勝利。「負け続けると、帰ってきても帰ってこなくても同じと言われるのでね」と笑い、「明日が大事ですね」と付け加えた。【前田祐輔】