<ソフトバンク0-3オリックス>◇8日◇福岡ヤフードーム

 オリックス西勇輝投手(21)が今季最終戦で、史上76人、87度目のノーヒットノーランを達成した。1四球のみの打者28人で終える「準完全」。ソフトバンク小久保の引退試合だったが、抜群の制球でガチンコ勝負し、主役を食った。

 喜んでいいのか、悩んだ。西は、最後の打者松田を遊ゴロに仕留めて球場を見回した。大引に抱きつかれ、号泣する伊藤に頭をたたかれ、ようやく笑顔を見せた。「引退試合だったのでどう喜んでいいのか。ガッツポーズができなかった。光さん(伊藤)めっちゃ泣いていた。普通は僕が泣くところなのに、大丈夫?

 と聞きました」。

 超満員の福岡ヤフードームで、主役を食った。低めに集め、12個のゴロアウト。小久保は二飛、一飛、遊ゴロ。この日の新聞で小久保が真剣勝負を望んでいることを知っていた。「全部本気でいった。引退試合だからノーヒットノーランできたんじゃないですか。みんなが小久保さんの引退を意識して、僕のことは何も意識してなかったので」。

 今年は首脳陣に酷評されてきた。味方の得点後に失点する悪癖を繰り返し、岡田前監督に「いっつも同じよ」と怒られていた。4月28日の西武戦では6回3失点で敗戦投手になると、観戦した宮内オーナーから「西もひどい」と批判された。くじけそうになる心を支える方法は、ひとりごと。この日の9回には「1球1球、集中して」と言い聞かせた。

 「もっとできていたと思うので、(退任した)岡田監督にアピールしたかった」。チームトップの8勝を挙げ、最下位チームの光になった。【益田一弘】

 ◆西勇輝(にし・ゆうき)1990年(平2)11月10日、三重県生まれ。竹永小2年で「竹永野球少年団」で野球を始める。「菰野(こもの)ボーイズ」を経て、菰野高では3年夏に甲子園出場。08年ドラフト3位でオリックス入り。昨季はプロ初勝利を含む10勝7敗。今季から背番号が63から21に変更され、球宴初出場も果たした。180センチ、80キロ、右投げ右打ち。