巨人阿部慎之助捕手(33)が2日、今日3日の日本シリーズ第6戦(東京ドーム)でのスタメン出場に強い意欲を示した。第3戦(10月30日)の試合中に右膝裏に違和感を訴えて第4、5戦は欠場。万全には程遠い状態だが、3年ぶりの日本一に王手がかかり「ここまできたらやるしかない」と覚悟を決めた。出場する場合は定位置の「4番捕手」が濃厚。慎之助でチャンピオンフラッグを奪回する。

 最後を決めるのは慎之助しかいない。日本一に王手をかけた巨人は移動日のこの日、札幌から空路で帰京。スーツ姿で引き締まった表情の主将が腹を決めた。「あと2試合。もう、これで最後だから。全力でやる。それしか今は考えていない」。鋭い眼光で強行出場に強い意欲を示した。

 敵地での2試合は右膝裏の違和感で欠場。少々のケガなら平然とした顔で出場を続けてきたことを考えれば「今季絶望」の4文字もよぎった。だが、大黒柱不在のチームは2連敗後に1つ勝って3勝2敗で踏ん張り、本拠地での決戦に持ち込んだ。

 欠場中の2日間も24時間態勢で必死の治療に努めてきた。「やれることは何でもやる」と、この日も、羽田空港到着後に神奈川県内の治療院に直行。グラウンドに立つためではない。少しでもいい状態でグラウンドに立つために手を尽くした。全てはチームのために、日本一を勝ち取るために最後まで主将として貢献したいの一心だ。

 阿部が不在の場合、チームの雰囲気はがらっと変わる。ベンチを外れた第4戦は好投した宮国を打線が援護できずに延長サヨナラ負け。第5戦は先発野手全員安打で勝利したが、相手先発吉川の不調で転がり込んできたともいえる。逆にフル出場した2試合は第1戦で決勝打、第2戦では右腕沢村への一喝で好投をアシスト。2連勝に導いた。

 王手をかけたとはいえ、日本球界最高峰の戦いは簡単ではない。原監督は「1つ勝つというのは大変なこと。結果は誰にも分からない。ただ、我々はこの状況を意気に感じなければならない。楽な勝負なんてない」と見立てる。だからこそ、慎之助の存在が不可欠となる。岡崎ヘッドコーチは「スタメンで出てくれるのを祈っている。捕手として出るか(試合に)出ないか。その2パターンだ」と、言葉どおり祈るような思いで復帰を待つ。

 さぁ、決戦は大詰めを迎えた。「4番、キャッチャー、阿部」。3年ぶりの日本一へ、このアナウンスを誰もが待ち望んでいる。【為田聡史】

 ▼阿部は今季の公式戦で133試合に先発出場。捕手で先発したのが111試合あり、残りは一塁手が21試合、指名打者が1試合。先発守備位置別のチーム成績を見ると、捕手で先発した試合が68勝32敗11分け、勝率6割8分と最も高い。阿部が代打または欠場した試合は6勝4敗1分けだから、やはり阿部が捕手で先発した時の巨人が一番強い。ちなみに、「捕手阿部」が打点を挙げると、チームは41勝5敗3分けで勝率は8割9分1厘に跳ね上がる。