<コナミ日本シリーズ2012:巨人4-3日本ハム>◇第6戦◇3日◇東京ドーム

 リードオフマンもケガを押して出場し、勝利に導いた。第5戦で右膝に死球を受けた長野久義外野手(27)が2号ソロを含む、2安打1四球3得点。クリーンアップの打点を呼び込み、シーズン通り得点の起点となった。

 大一番で、長野が最多安打男の真骨頂を発揮した。同点の7回、先頭打者。いきなり2ストライクと追い込まれた。だが慌てない。ボールになる変化球は見逃し、外角ギリギリの球は飛びつくようにカット。第5戦の死球で右膝を打撲したが「試合に入ったら忘れてました」となりふり構わなかった。四球で出塁して役割を全うした先に、阿部の決勝打。二塁から全速力で決勝のホームを陥れた。

 患部が痛くないはずはなかった。前日練習は回避。わざと右足を引きずりながら「無理でーす」と、明るく振る舞っていた。

 本音は違った。日大4年時にはシーズン中に左足首を亀裂骨折したが、痛みをこらえて全試合戦い抜いて首位打者に輝いた。今回も欠場は頭になかった。「大丈夫です。必死に頑張ります」。常に「みんなで勝てるのが一番」と断言する男は、日本一のために身を削ると決めていた。

 覚悟が不安を消した。初回にポストシーズン12試合連続安打を決めると、2回には武田勝の117キロスライダーを左中間席へ放り込んだ。第2戦に続く1発。打った瞬間にゆっくり歩き出し、右拳を突き上げた。

 守備でも全力を貫いた。7回2死満塁。糸井のライナーを下がりながら好捕すると、背中がフェンスにガツン。両手を上げたまま開いた口がふさがらないほど驚いたが、ボールは離さなかった。8回にも右中間の打球をランニングキャッチ。いつも通りに躍動した。

 優勝の瞬間、歓喜の輪に無我夢中で走っていた。「何とか今日で決めたかった。うれしかったです」。終始硬かった表情が、ようやく日本一の笑顔に変わった。【浜本卓也】