巨人阿部慎之助捕手(33)が14日、日本代表が合宿を行う福岡入りした。右ふくらはぎ筋膜炎から回復途上だが、山本浩二監督(66)の命を受け若手主体のチームに加わった。メジャーリーガーの辞退が相次ぐ中、国際試合に73試合もメンバー入りした経験を伝授すると約束。主将として若い力を束ねることも誓った。この日、今年の球界で最も貢献した競技者に授与される「正力松太郎賞」を、巨人原辰徳監督(54)とあわせて受賞した。日本の大将が侍ジャパンを率いる。

 若き侍たちの台頭に希望を見いだした。午後の羽田空港。福岡に向かう登場口に現れた阿部に、悲壮感は一切なかった。メジャーリーガーの代表辞退が相次ぐ現状に「それぞれの事情があるから仕方ないこと」と理解を示した。一方で「プラスに考えれば、国内にいる若い選手のチャンスが増えるということ。そのエネルギーをチームに生かせばいい」と続けた。

 その言葉が侍ジャパン主将としての“所信表明”だった。自身はアマチュア時代からの国際経験は十分。まずは伝道師となり、若侍たちを鍛え上げる。「試合は難しいかもしれないけど、ブルペンだったら何人でも受けることができる。伝えられることはあるからね」。試合を含め実働4日間の中でブルペン捕手を務めるプランを明かした。「国際試合はストライクゾーンが広い。投手はそこを生かさないといけない」と、自らのミットで経験を伝達していく。

 国際試合における打席での最善策を惜しみなく伝える。「ストライクかボールじゃなくて、打てる球を打つ。それに限る」。投手とは逆でストライクゾーンを意識しすぎないことが重要だと説いた。「(キューバは)本大会でも絶対に対戦しないといけないチーム。しっかりと観察することも大事になる。捕手のペスタノ、内野手のグリエルとか、いい選手はたくさんいるからね」。味方だけでなく、敵にも鋭い視線でにらみをきかせる。

 この日、正力松太郎賞の受賞も決まった。「最初は信じられなかった。すばらしい賞をいただけて光栄です」と感謝し「(WBCは)そんなに簡単に勝てるとは思っていない。でも、やるからには勝ちたい。明日、ジャパンのユニホームを着たらお尻がキュッとしまると思います」。経験、実力、明るさで、阿部が侍ジャパンをけん引する。【為田聡史】