さりげなくアピールに成功した。中日のドラフト1位福谷浩司投手(22=慶大)が21日、新人トレで初のブルペン投球を披露。新聞の構成を意識し背番号と同じ24球でまとめた。中田宗男スカウト部長(55)は「憲伸と同じで軸はしっかりしている」と新人王獲得の大物とダブらせた。数字だけでなく確かなインパクトを残し、昨季の田島に続くキャンプ放任方針も固まった。

 秀才右腕の頭脳がフル回転した。福谷がマウンド上で意識していたのは、突き刺さるような視線ではなかった。ドラフト4位杉山翔大捕手(21)を中腰にして24球。初ブルペンの球数を問われ、どや顔で答えた。

 福谷

 よくあるじゃないですか。背番号を使って何球っていう写真。いいスタートを切れるように願掛けっていうこともあるんですけど、これで大きく扱ってもらえるかなと思って。

 ゆったりとしたフォームから確かめるようにボールを投じた。腕を振る度に力強さが増す。張り詰めた空気の中でボールを捕球する音が鳴り響いた。首脳陣や先輩に見守られて心臓バクバクのはずの初ブルペンで、翌日の新聞紙面を考えるほど余裕たっぷりだった。

 憲伸クラスの声も挙がった。評価が高かったのはブレることがない体の軸。中田スカウト部長は「ズドーンとくる球の質。力でねじ伏せられるタイプ。軸がぶれないところなんかは、憲伸に似ている」。完成型に近かった川上と違い、まだ成長段階。それでも体の強さはダブるところがある。

 育成方針は「田島方式」に固まった。今中投手コーチは「慌ててどうのこうのということじゃない。キャンプやって、よければオープン戦。投げたければ投げたらいい」とブルペン入りさえも任せる考え。昨季ルーキーだった田島は放任調整で開花。2月下旬のオープン戦から猛アピールし、開幕1軍に生き残った。身近な成功例にならう。

 福谷

 (ドラフト2位の)浜田みたいに43番だったら、どうしようってなってた。24番で良かったです。

 今後もトレーニングコーチと相談しながらブルペンに入る。豪腕だけじゃない。ドラ1右腕には、プロで必要な度胸とセンスが備わっているようだ。【桝井聡】

 ◆中日川上の1年目

 明大から97年ドラフト1位で入団。98年1月9日に入寮し翌10日から新人自主トレに参加。卒業試験などで2月の沖縄キャンプには4日遅れで合流。1軍発進で初ブルペンは合流2日目の6日だった。1年目は26試合に登板し14勝6敗、防御率2・57で新人王に。

 ◆中日田島の1年目

 東海学園大から11年ドラフト3位で入団。12年1月9日に入寮し、同11日から新人合同自主トレに参加。2月の沖縄キャンプは2軍スタート。キャンプ終盤の紅白戦で好投しオープン戦登板、開幕1軍を勝ち取る。シーズン中はセットアッパーとしてフル回転。1年目は56試合に登板し5勝3敗、防御率1・15。