“阿部主将”が「アベノミクス」でWBC3連覇をねらう。巨人阿部慎之助捕手(33)が23日、東京・千代田区の総理大臣官邸に安倍晋三首相(58)を訪問。昨季2冠を獲得した功績で受賞した「日本プロスポーツ大賞総理大臣賞」の賞状を授与された。阿部は席上、総理から直接WBCに向けた激励を受けた。「3本の矢」を胸に秘め、大きな挑戦がスタートする。

 黒のスーツとネクタイで阿部が首相官邸を訪れた。「アルジェリアの人質事件があった。いまだ安否の確認が取れない方、みなさんに家族だっているはず」と神妙だった。「そんな状況じゃないと思うけど…。貴重な時間を割いてもらって感謝します」と恐縮した。

 それでも、安部首相はでっかい人だった。冒頭で「さすが、体格が…。同じ“アベ”でも体格が違いますね」「捕手と保守ですね」とほぐしてもらった。賞状を授与されバットを渡した。向き合うと「ドキッとするくらい、目力がハンパじゃない。これが国をしょって立つ人か」と圧倒された。その後の懇談でもらった言葉にハッとした。

 阿部

 「明るい話題も必要」と言っていただいた。頑張りますよ。

 「明るい話題」とは、WBC3連覇にほかならない。首相から直々に託され意気に感じた。

 この大会をどう位置付け、侍たちを引っ張っていくのか。“アベノミクス”の骨格となる「3本の矢」は頭の中に描いてある。

 (1)五輪野球の復活

 「一番の目標は、WBCを盛り上げ東京五輪で野球が復活してほしいな、と。世界に『野球ってすごい』と伝えたい」。大会の成功が道筋になると信じている。

 (2)北京五輪のリベンジ

 「山本監督はもちろん、星野監督はじめ、みんな悔しい思いをした。北京メンバーの思いも背負って戦わなくてはいけない」。同じ国際舞台となるWBCでメダルなしの借りを返す。

 (3)後輩へ財産を残す

 「国際試合の経験は、自分を成長させてくれる。1人でも多くの後輩たちに、同じ経験をしてもらいたい」。後進のため、自身の国際大会は今大会で最後とする覚悟を決めた。

 いつもの慎之助節は「同じ“アベ”で良かったかな。“シン”まで一緒ですね」だけだった。「大変な賞をいただいた。娘にも、孫の代まで誇れる」と感激し、「もう、日にちがない。心と体の準備をして、キャプテンとして日本を引っ張っていく。それだけです」と誓った。【宮下敬至】

 ◆アベノミクス

 安倍晋三首相が掲げる経済政策の通称で、安倍とエコノミクスを合わせた造語。大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つが基本方針で、安倍首相は「3本の矢」と表現している。具体的には2%のインフレ目標、日銀による金融緩和拡大、公共事業による需要追加などが主な取り組みとなる。