本番に強い!

 巨人のドラフト1位・菅野智之投手(23=東海大)が10日、終身名誉監督の長嶋茂雄氏(76)が見守る中、ブルペンで46球を投げた。熱視線を受けながらも物おじする様子はなく、今キャンプでベストピッチを披露した。3連休の中日ということもあり05年の統計開始以降、最多の3万8000人の観衆が集まる大盛況ぶりだったが、大物ルーキーは緊張よりも興奮を楽しんだ。今後は16日の紅白戦(沖縄)で実戦デビューする予定。

 威風堂々たる振る舞いが菅野の強さを象徴していた。3日ぶりにブルペンに入ると、長嶋氏から握手で出迎えられた。「ものすごいオーラでした。初めてお会いしました。『頑張ってくれ』と言われました」。帽子をとって自己紹介を済ませると、うれしそうな表情で投球練習を開始した。

 ブルペンに詰め掛けた超満員のファンの視線も一身に浴びた。1球ごとにどよめきがあがる異様な雰囲気の中で、ニヤリと笑ったのが合図だった。プレート後方の長嶋氏、捕手後方の原監督にはさまれても「自分のことに集中していた。実戦も近くなってきたし、気持ちも少しずつ入ってきた」と、気後れすることなく腕を振った。

 強心臓ぶりは明らかだった。28球目。長嶋氏から「ワンシーム」をリクエストされると、2球続けて外角いっぱいに落として応えた。さらに、33球目に「カーブ」の要求には大きく弧を描く軌道でミットに収めた。長嶋氏を「いい腕の振り。新聞や雑誌より実際の方がいい」と大満足させた。「自分の良さを少しは出せたかなと思います」と、周囲の注目や重圧をいとも簡単に己の力に変えた。

 本番想定の準備だ。ブルペンに関しては「課題を克服する場所」と位置づけている。「ブルペンが良くてもマウンドがダメという経験はある。でも、ブルペンがダメでもマウンドがいいというのはたくさん経験してきた」と、あくまでも実戦を重視する。常々口にするのは「東京ドームには、この何十倍、何百倍のお客さんがいる。その中で投げるために準備をしないといけない」。ミスターが、原監督が、大観衆の視線の先で菅野が、今シーズンの活躍を予告した。【為田聡史】

 ◆長嶋タッチ

 巨人長嶋茂雄終身名誉監督がキャンプでタッチした選手は活躍するといわれている。始まりは08年の坂本で、この年からレギュラーに定着した。10年には長野にタッチし、新人王に輝かせた。11年はキャンプ視察に行かず、昨年は宮国を絶賛。タッチはしなかったが、6勝を挙げた。