主将の心意気を感じさせる1発だった。巨人高橋由伸外野手(37)が14日、紅白戦でチーム1号となるソロを放った。7回無死、左腕岸の129キロ直球を高い放物線で右翼席へ。「芯で捉えることができた。結果がいいにこしたことはないけど、たまたまですよ」。実戦2試合目。まだ投手の球に目も慣れていない。そういう意味で「奇跡的な結果です」と謙遜した。

 それでも周りのとらえ方は違う。結果にこだわる沖縄キャンプを旗印にしている原監督からは「いいバッティングをしました。彼も最初、結果、態度、後ろ姿というもので僕は引っ張るよというようなことは言ってましたし、いいスタートを切ってくれたと思いますね」と評価された。チーム方針を体現した1発は、まさに主将の仕事だった。

 阿部がWBCに出場することで任された役目。やりたいと思って手を挙げたわけではないが、胸にはCマークが縫いつけられ、腹をくくった。「任せてもらえた以上は、今まで以上に自分のことをしっかりやりたいと思った」。厳しく自分を律することで、背中で引っ張る主将像をつくりあげようとしていた。

 その思いは後輩にも届いた。沖縄自主トレから一緒だった隠善は「自主トレの時、僕が打撃投手を務めて、同じような打球を打ってたんです。デジャビュです。さすがですね」と、主将の背中に熱いものを見た。高橋由のチーム第1号は02年以来。それは原巨人が初めての日本一に輝いた年だ。吉兆でもある1発が、若手のハートに火をつけ、チームの進化を加速させる。【竹内智信】