<オープン戦:広島1-2巨人>◇14日◇マツダスタジアム

 広島永川勝浩投手(32)が、3年ぶりの開幕1軍スタートに向け大前進した。オープン戦巨人戦で、5回から2番手で登板。1イニングを3者連続三振で終え、猛アピールした。野村謙二郎監督(46)も「いいときの永川を見せてくれた」と絶賛。かつての守護神が、ついに復活のときを迎えようとしている。

 ほえた。永川勝は最後に、かつての宝刀を抜いた。5回2死、矢野を1ボール2ストライクと追い込むと、この日初めてのフォークで空振り三振。3者連続三振を奪い、マウンドに立ちはだかるさまは、守護神時代をほうふつさせた。これ以上ない結果に、永川勝も充実の表情を浮かべていた。

 「今日は久しぶりに悪くなかった。力も抜けていて、3ボールが無かったのも良かった」

 ストライク先行で、わずか11球で任務を完了。今までの投球と明らかに違うのは、そのうち9球がスライダーだったことだ。

 引退も覚悟した昨オフ、契約更改で「世代交代ですから食らいついて、もう1回上に立てるようにがんばりたい」と再起を誓った。昨季はプロ10年目で初の1軍登板なし。守護神だった10年には1億6000万円を稼いでいた年俸も、3年で4分の1となる4000万円まで急落した。変わるしかなかった。

 クローザー時代は直球とフォークだけで配球を組み立てた。だが、春季日南キャンプでスライダーを完全習得すると、かつてとは別人の投球スタイルになった。山内投手コーチは「ストライクが取れる球種があることで、直球も思い切り腕を振れる」とメンタル面においても効果があると分析する。

 野村監督はオープン戦5試合連続無失点の右腕を「ベンチ入りするメンバーを選ぶ中で、いい印象を与えてくれた。いいときの永川を見せてくれた」と高評価。だが、永川は気を緩めない。

 「残れるようにしたい。僕は1試合でも(失敗を)やってしまったら終わりなので」

 オープン戦は残り7試合。信頼を築き上げ、3年ぶりの「定位置」に返り咲く。【鎌田真一郎】