<国民栄誉賞表彰式>◇5日◇東京ドーム
ONが再び並び立った。国民栄誉賞のプレゼンターを務めたソフトバンク王貞治会長(72)も、長嶋茂雄終身名誉監督(77)、松井秀喜(38)両氏の晴れ舞台に感無量だった。世界の王でも届かなかったミスターの存在感を素直にたたえ、松井氏に対しては、将来のホームラン王育成という指導者としての大きな宿題を与えた。
王氏が顔を近づけた。耳元で「おめでとう」とささやいた。ミスターが王氏の右肩に顔を埋めた。強い巨人の3番、4番としていつも寄り添っていたONが、再び球場で寄り添った。拍手がドームの屋根ではね返り、どんどん大きくなって2人に降り注いだ。
凜(りん)とした長嶋氏の姿に胸を打たれた。「歩いている姿。すごく努力していると感じた。肉声でファンの方々に気持ちを伝えた。ファンというか、我々の念願もかなった。待ちに待ったユニホーム姿で、打ち気満々でねぇ」と、スタンドで見守った全員と同じ思いだった。「かけ離れた存在だった。何をしでかすか分からない。ファンの期待に一番応える嫌なバッターで、僕らからすれば頼りになって。お金を払って、グラウンドに足を運ぶ価値のある選手だった」としみじみ語った。自身は77年に米大リーグのハンク・アーロンの持つ世界記録を塗り替える756号を放ち、その偉業により最初の国民栄誉賞を受賞した。それでも、どんなに打っても追いつけない領域がある。ずっと前から知っていた。
松井氏に対しては、愛情を込めてハッパを掛けた。「彼は長嶋さんと一緒だったせいか、ちょっと遠慮がちだった。もっと胸を張っていいんだ」と、終始控えめだったゴジラに言った。自分の後を継いで、左のホームランバッターとして本塁打を量産した。「ジャイアンツとヤンキース。日米トップの環境で、数字ではない苦労があったはず。長距離打者として、よく頑張った」。日米通算507本塁打の価値を誰よりも知るからこそ、堂々としていてほしかった。
「長嶋さんは別格」とした上で「次のね。王、松井の後を追ってくれる選手をね。(松井氏と)共通の思いをOBとして常に持って。互いに心を通わせながら、野球をやっている子どもたちに伝えられたら」と続けた。後継者のスラッガーを育てろ-。松井氏にはでっかい目標を課した。【宮下敬至】



