<国民栄誉賞表彰式>◇5日◇東京ドーム
「4番、センター、松井」。引退セレモニーは懐かしい場内アナウンスで始まった。主役がマイクの前に立つと、満員の観衆の大声援がやんだ。静寂の中の第一声。松井秀喜氏(38)は、快く迎えてくれたファンへ、感謝の思いを伝えた。
松井氏
ジャイアンツファンの皆さま、お久しぶりです。もう2度とここに戻ることを許されないと思っていました。しかし、今日、東京ドームのグラウンドに立たせていただいていることに、今、感激で胸がいっぱいです。
02年のシーズン後、「裏切り者と呼ばれるかもしれない」と悲壮な覚悟でヤンキースへ移籍した。あれから10年余り。待っていたのは、当時と変わらない温かい声援だった。
続いて行われた国民栄誉賞の表彰式。歴代受賞者2人が見守る中、金のバットを贈られた松井氏は恐縮しきりだった。「僕は王さんや衣笠さんのように世界記録を作ったわけでもない。身に余る光栄」。その重みに身を引き締める一方、「人生の師」と仰ぐ長嶋茂雄終身名誉監督(77)との同時受賞には、感無量の表情だった。「僕は(長嶋)監督の国民栄誉賞を、おそらく国民の誰よりもうれしく思っている」と、満面の笑みを浮かべた。
投手役を務めた始球式では、11年ぶりとなる巨人のユニホーム姿を披露。当時よりも一回り大きくなったおなかのあたりを気にしながら、リラックスした様子でマウンドへ向かった。だが、打席の長嶋氏と向かい合うと急に緊張感に襲われ、ボールは胸元へ。頭を抱えて悔しがった松井氏は「(長嶋氏には)入団以来、常にインハイの球を打つことを練習させられたので…」と、苦笑いで振り返った。
今後は指導者としての活躍に期待が掛かる松井氏は、再び東京ドームに戻ってくることをファンに約束した。「これからも僕の心の中にはジャイアンツが存在し続けます。どういう形になるか分かりませんが、またいつか、皆さまにお会いできることを夢見ています」。受賞後の会見でも「これからも(長嶋)監督の背中を追いかけ続けたい」と、新たな夢に思いをはせた。【広瀬雷太】



